About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: PP Møbler(PPモブラー)
Year:
Material: Solid wood, fabric or leather upholstery
Size: W650 × D680 × H890 × SH410 cm
Story
PP105 イージーチェアは、ハンス・J・ウェグナーが1947年に設計した初期の椅子を原点とし、のちに PPモブラーによって再構成・製品化された作品です。彫刻的な造形で知られるウェグナーの代表作群とは異なり、本作は日常生活の中で自然に使われることを前提とした、控えめで誠実な設計思想に基づいています。
意匠の基盤となっているのは、17世紀英国に起源を持つウィンザースタイルです。厚みのある座面に脚部や背もたれのスポークを直接差し込む構造は、軽やかな外観と高い構造強度を両立しています。ウェグナーはこの伝統的形式を装飾から解放し、必要最低限の要素へと整理することで、北欧モダンならではの静かな均衡を導き出しました。
背もたれは直立に近い角度で構成され、深く身体を預けるラウンジチェアとは異なり、読書や会話といった能動的な姿勢を自然に支えます。座面高は410mmとやや高めに設定され、アーム高は約660mmと安定した位置に設けられているため、立ち座りの動作を妨げにくく、日常の動作に無理なく寄り添います。クッション構成も過度な柔らかさを避け、身体を適切に支える保持力を重視しています。
製造を担う PPモブラーは、ウェグナーの設計意図を最も深く理解する工房のひとつです。厳格な含水率管理を施した無垢材を用い、伝統的な接合技法によって、長期使用を前提とした安定したフレーム構造を実現しています。表面仕上げも木材の質感を損なわない方法が選ばれ、素材本来の表情が時間の経過とともに穏やかに変化していきます。
PP105は、空間の主役として主張する椅子ではありません。しかし、壁際や書棚のそばに置かれたとき、その存在は生活の動線や時間の流れに自然と溶け込みます。視覚的な強さを抑えながら、人の身体と日常行為を誠実に支えるこの椅子には、ウェグナーが一貫して追求してきた「人間のためのデザイン」が静かに息づいています。
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