About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1950
Material: Oak, Upholstery
Size: W191 × D77 × H75 cm / SH38 cm
Story
AP 18S ソファは、ハンス・J・ウェグナーが1950年頃にデザインした作品であり、デンマークモダン家具の流れの中でも特に重要な位置を占めています。彼の名声は椅子のデザインによって確立されましたが、このソファには椅子と同様に「人間工学に基づく快適性」と「素材への敬意」が貫かれています。
このモデルは、アメリカで生まれた「タキシードソファ」の形式を下敷きにしつつ、ウェグナー独自の有機的な機能主義で再解釈した点に特徴があります。アームと背もたれが同じ高さに揃えられた立方体的なフォルムは、均整の取れた美しさを持ちつつ、実際に座った際の安定感と快適性を提供します。
製造を担ったAP Stolenは、ウェグナーの張りぐるみ家具の製作を多く手掛けた工房であり、その精緻な張り技術はAP 18Sの完成度を大きく高めました。特に内部に組み込まれたスプリング構造は、単なる外観の美しさに留まらず、長時間の使用に耐える快適な座り心地を実現しています。
また、AP 18S はウェグナーの木材への深い理解を示す作品でもあります。フレームにはオーク材を用い、脚部を露出させることで家具全体の軽やかさを確保しました。その一方で、全面を覆う張り地は、ソファ全体を彫刻的な塊として際立たせています。この対比は、彼が異なる素材と技法を調和させる独自の能力を象徴しています。
AP 18S は、同時期の GE 290 などフレームが強調されたソファとは異なり、張り地による立体的な造形表現に重きを置いた点でユニークです。ウェグナーが家具デザインにおいて多様な表現方法を試みたことを示す好例であり、彼のデザイン哲学の普遍性を物語っています。
