AP34 Sofa series | エアポートソファシリーズ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / GETAMA(ゲタマ)
Year: 1954
Material: Steel, Oak, Beech, Leather, Wool
Size: W272 × D76 × H72 cm / SH39 cm(AP-34/4)


Story

AP34シリーズは、ハンス・J・ウェグナーが1950年代にデザインした公共空間向けの張りぐるみ家具シリーズで、「エアポートソファ」という愛称でも広く知られています。名称は、当時のコペンハーゲン・カストロップ空港の待合室に設置されたことに由来しています。

最大の特徴は、彼の作品としては珍しいスチール脚を採用した点です。通常は木材を基調とした彼の家具デザインにおいて、円筒形のステンレス脚を組み合わせたことで、重厚な張りぐるみソファに軽快さを与え、まるで宙に浮いているかのような視覚的効果を生み出しています。この試みは、ウェグナーが素材に縛られることなく「機能性」を最優先した姿勢を示す好例です。

シリーズには2人掛け(AP-34/2)、3人掛け(AP-34/3)、4人掛け(AP-34/4)、アームチェア(AP-34U)といったバリエーションが存在します。中でもキャスター付きのAP-34Mは、公共空間での柔軟な配置を意図した機能的なモデルとして特筆されます。また、一部にはオーク脚を用いたAP-34/1Tも製造され、素材の多様性を示しています。

当初はAP Stolen社によって製造されましたが、その後、長年ウェグナー作品を手掛けてきたGETAMA社によって「GE34」として復刻生産が行われました。製造元による品番の違いは、作品の真正性や収集価値を判断する上で重要な要素となっています。

AP34シリーズは、モジュール的に展開されたソファ群として、公共施設からプライベートな住宅まで幅広く用いられ、今日でもミニマルな佇まいが現代的な空間に調和します。ウェグナーの「オーガニック・ファンクショナリズム」が、木材を超えて金属という素材にも適用された稀有な例であり、その普遍的な価値は今なお失われていません。


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