About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / Fredericia(フレデリシア) / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1959
Material: Steel, Leather, Fabric
Size: W61 × D69 × H79 cm / SH40 cm
Story
AP39ラウンジチェアは、ハンス・J・ウェグナーが1959年にデザインした椅子で、デンマーク・モダニズムの公共デザインを象徴する作品のひとつです。通称「カストロップチェア」または「エアポートチェア」として知られ、コペンハーゲン空港(カストロップ空港)のために製作されました。
ウェグナーは木材を中心に数多くの名作を生み出したことで知られていますが、このAP39ではスチールフレームを採用し、彼の柔軟なデザイン哲学を示しました。細身のチューブラースチールのフレームにより、軽快でありながら強靭な構造を実現し、公共空間に耐えうる耐久性を備えています。
AP39はオリジナルではAP Stolenによって製造され、その後フレデリシアを経て、現代ではカール・ハンセン&サンが「CH401」として復刻生産を行っています。AP40やAP41などの関連モデルとともに、空港のラウンジ空間を彩り、デンマークモダニズムの理念を体現しました。
このチェアは、ウェグナーが「最高の椅子」を追求する過程で、素材の制約に縛られずに生み出した重要な実験作でもあります。木工中心の作品群の中で異彩を放つスチール採用例でありながら、彼の「オーガニック・ファンクショナリズム」の理念、すなわち人間工学と美の調和を揺るぎなく表現しています。
今日では、ヴィンテージのAP Stolen製品は稀少性から高い評価を受け、復刻版も現行モデルとして安定した需要があります。AP39は単なる空港用家具にとどまらず、公共空間における美と機能の融合を示した、20世紀デンマークデザインの重要な証言です。
