AP46 OX Chair | OXチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)Erik Jørgensen(エリック・ヨルゲンセン)Fredericia(フレデリシア)
Year: 1960
Material: Oak, Beech, Steel, Leather, Fabric
Size: W99 × D99 × H92 cm / SH36 cm


Story

OXチェア No.46は、ハンス・J・ウェグナーの大胆な実験意欲と、現代デザインの限界を押し広げようとする意志を体現した力強い芸術的メッセージです。彫刻的な造形美、革新的な素材の使用、そして快適性へのこだわりが融合し、20世紀家具デザインの歴史において特筆すべき節目となりました。この椅子は「大胆」「特徴的」「彫刻的」「型破り」といった形容がされ、発表当初はその斬新さゆえにデザイン界で議論を呼んだ異色作です。

名称は、角のようなアームレストが雄牛の頭部を連想させることに由来し、他の作品のように素材や形状に由来する名称とは異なります。この象徴的命名と造形は、椅子に象徴的で圧倒的な存在感を与え、単なる機能家具ではなく応用芸術作品へと昇華させました。これにより、家具というカテゴリー自体の境界を押し広げる芸術的探求が明確になります。

デザインの着想源には、ウェグナーが敬愛したパブロ・ピカソの雄牛の連作ドローイング(1945〜46年)があり、力強いフォルムの単純化と男性的エネルギーを家具として具現化しました。木材主体の軽やかなフォルムから一転、内部スチールフレーム構造と高品質レザー張りを採用し、クロムメッキスチールのベースが現代的かつ工業的な印象を与えています。92cm四方の立方体に近いプロポーションと調節可能なヘッドレストは快適性と存在感を両立させています。

製造史はこの椅子の物語において重要です。1960年、A.P. Stolen(AP Workshop)が初めて製造しましたが、複雑な張り込みと高コストによりわずか2年で生産終了。その後1980年代後半、ウェグナーは張り込み技術に優れたErik Jørgensenに依頼し、1989年のミラノ家具見本市で再発売しました。エリック・ヨーゲンセンは2020年まで製造を続け、その後Fredericiaが同社を買収し、現在はフレデリシアのデンマーク工房で生産が続けられています。なお、PPモブラーは試作段階で協力しましたが、量産は行っていません。

発表当初は賛否が分かれましたが、現在では「大胆な傑作」として再評価され、コレクターや愛好家に高く評価されています。OXチェアはウェグナーの創造性と素材探求の象徴であり、デンマーク・モダニズムの枠を拡張した革新作として、今も強い存在感を放ち続けています。

 

  

 

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