AP50 Arm Chair | アームチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / Erik Jørgensen(エリック・ヨルゲンセン)
Year: 1962
Material: Oak, Teak
Size: W64 × D64 × H80 cm / SH43 cm


Story

AP50 Arm Chairは、1962年にハンス・J・ウェグナーがAP Stolenのためにデザインしたアームチェアです。彼の作品の中では控えめな存在ながらも、ウェグナーの哲学を最も純粋に体現した椅子として高く評価されています。

その特徴は、張りぐるみの座面と背もたれがフレームの中で浮遊しているかのように見える建築的な構造です。フレームにはオークやチークといった堅牢で美しい木材が用いられ、アームレストには柔らかな丸みを持たせることで、直線的な構造と有機的な手触りのバランスを生み出しています。

ウェグナーは椅子を「すべての角度から美しく見えなければならない」と語っており、AP50も背面や側面から眺めた際にシャープで引き締まったシルエットを持っています。これは彼の徹底した職人としての視点と、美的探究心の結晶です。

この椅子は単なる安楽椅子ではなく、読書や会話、デスクワークなど能動的な活動に適した設計となっています。深いリラックス性と同時に、姿勢を保つための人間工学的な工夫が施され、フォーマルな空間から日常生活まで幅広く対応できる多用途性を備えています。

また、AP50はシリーズとして「AP50 mini」やアームレスの「AP56」とともに展開され、用途に応じた変奏を持つデザイン群を形成しました。これらのモデルは「テーマと変奏」というウェグナーのデザイン手法を体現しており、一つのコンセプトを多様な生活シーンに対応させる意図が込められています。

AP50は、パパベアチェアやオックスチェアのような華やかな存在ではありませんが、静かな自信と誠実な構造美を持つ作品です。長年使用に耐えうる強度と快適性を備え、日常の中でその価値を実感できる、まさに「控えめな卓越性」の象徴的な椅子といえます。


PAGE TOP