AP58 Easy Chair | イージーチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1958
Material: Steel, Leather, Fabric
Size: W64 × D66 × H75 cm


Story

AP58イージーチェアは、ハンス・J・ウェグナーが木材から鋼鉄へと素材を拡張した試みを示す作品です。木工の巨匠として知られる彼が、公共空間という新しい用途に対応するために生み出した椅子であり、デンマーク・モダンの適応力と進化を象徴しています。

この椅子の特徴は、鋼管を用いた軽快なフレームと、一体的に張り込まれたシェル型の座面との組み合わせです。木工家具に見られる重厚さとは対照的に、AP58は軽量でありながらも堅牢で、空港や会議施設といった公共空間での使用に耐える設計がなされています。

ウェグナーはこの作品においても「オーガニック・ファンクショナリズム」という理念を貫いています。人体に寄り添う快適性と、どの角度から見ても美しいフォルムを両立させる姿勢は、鋼鉄という素材を用いた場合でも変わりません。曲線的な張り地のフォルムと直線的な鋼鉄フレームの対比は、彼の哲学を視覚的に表現しています。

製造を担当したAP Stolen社は、張り地加工を得意とした工房であり、ウェグナーのデザインを高い精度で具現化しました。パパベアチェアに続く協業の延長線上で生まれたAP58は、彼らの技術とデザインの理想が結晶した成果でもあります。

AP58は同時期のAP57カンファレンスチェアやAP34エアポートソファと同系列に位置づけられ、空港や公共施設を想定した「エアポートチェアシリーズ」の一部を構成しました。このシリーズは、ウェグナーが個々の椅子に留まらず、建築空間全体の統一感を意識してデザインしていたことを示す好例です。


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