About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1965
Material: Teak / Palisander (Rosewood) / Oak
Size: 2-seater: W180 × D71 × H75 cm / SH38 cm | 3-seater: W193 × D80 × H75 cm / SH38 cm
Story
AP62は、可視化されたフレーム構造と抑制の効いたプロポーションによって、ウェグナーが追求した「構造の正直さ」をそのまま形にしたソファです。四方枠のフレームは無垢材で組まれ、脚からアームへと連続するラインが均整の取れた量感を生み出します。直線基調の外郭に対して、座・背・アームの厚みが人の身体を柔らかく受け止めるよう計算されており、幾何学と安楽性のバランスがきわめて巧みです。
アーム外側に見える丸いカバーキャップ(木栓風の意匠)は、固定機構を美しく処理するための要素であり、機能を隠さずデザインへ昇華するウェグナーらしい手つきが表れています。意匠上のアクセントであると同時に、フレームと上部ユニットの結合関係を視覚的に説明する役割も担い、構造の「見える化」によって佇まいに確信を与えています。
AP Stolenの製作は、キャビネットメーカー品質の厳密な木工精度を前提としており、角の取り方や面の出し方、脚元の納め方にまで職人の手の跡が宿ります。フレーム各部の断面は過不足なく削ぎ落とされ、指物の考え方に根差した堅牢性と軽やかさが同居します。家庭での長期使用を想定した構造計画も特徴で、アーム部はスパイラルピンの着脱によりメンテナンスや張り替え作業を容易にする設計思想が織り込まれています。
型展開は2シーター(おおよそW180)と3シーター(おおよそW193)を基本に、住空間のスケールに合わせたモジュール設計がなされました。座面高は約38cm前後で、日常動作に無理のない立ち座りを支える設定です。直線的な外形は空間に凛とした秩序を与えつつ、木部の表情豊かな柾目・板目が光を受けて陰影を作り、ミニマルな造形に豊かな表情をもたらします。
このデザインはのちにカール・ハンセン&サンによってCH162/CH163として復刻され、オリジナルの本質を保ちながら現代の住環境に適応する仕様で継承されました。フレームの見せ方、プロポーション、そして「機能の美」の考え方はいずれも連続しており、ウェグナーの成熟した時期の価値観が、時代を超えて一貫していることを示しています。

