AP62 Sofa(CH162/CH163) | ソファ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン), Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1962
Material: Oak, Teak, Rosewood
Size: W135 × D79 × H75 cm / SH40 cm(2人掛け), W193 × D79 × H75 cm / SH40 cm(3人掛け)


Story

AP62ソファは、1960年代にデンマーク・モダニズムの成熟を象徴する作品として発表されました。ハンス・J・ウェグナーは「オーガニック・ファンクショナリティ」という哲学を建築的に純化し、シンプルで明快なフォルムに昇華させました。その設計思想は「4本の脚、座面、背もたれ」という要素を最小限に削ぎ落とし、余分な装飾を排した構造に凝縮されています。

フレームにはオーク、チーク、ローズウッドといった高級材が用いられ、直線的で力強いラインが一貫性を生み出しています。特にローズウッド製のモデルは希少性が高く、素材の存在感がソファ全体に重厚な美を与えています。接合部の緻密な職人技と均衡のとれたプロポーションは、まさに彫刻的な美しさを備えています。

APストーレンはこのシリーズの製造において重要な役割を果たしました。アンカー・ピーターセンが率いた同工房は、複雑な張りぐるみ構造やクッションの仕立てを高い品質で実現し、ウェグナーが求める理想の座り心地を形にしました。クッションには羽毛が詰められ、包み込まれるような柔らかさと、リバーシブル仕様による実用性を兼ね備えています。

また、AP62シリーズはシステム的な展開を持ち、ラウンジチェア、ハイバック、2人掛けから4人掛けまでのソファが揃えられました。空間に合わせて選択できる構成は、当時の住宅や公共空間に柔軟に対応できるものでした。特に大型の3人掛けや4人掛けは希少であり、デザインの完成度とともにコレクターから高く評価されています。

今日では、AP62ソファは単なる家具ではなく、モダンデザインの知的成熟を示す証として捉えられています。機能性、素材、職人技が高度に統合されたこのシリーズは、ウェグナーのキャリアにおける「静かな完璧さ」を体現する存在であり、20世紀デンマーク家具の歴史における重要な一章を刻んでいます。


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