AP64 Easy Chair | イージーチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1965
Material: Oak, Teak, Rosewood
Size: W84 × D78 × H75 cm / SH37 cm(イージーチェア)、W216 × D78 × H75 cm(ソファ)


Story

AP64ソファは、1965年にハンス・J・ウェグナーがデザインし、APストーレン社によって製造されたシリーズです。ウェグナーが「巨匠」として世界的に名声を確立した後期にあたる作品であり、革新よりも洗練を志向した彼の円熟した美学を体現しています。

この作品は、直線的で建築的なシルエットと、有機的なカーブを描く張りぐるみのアームが調和したデザインを特徴とします。特にフレームのほぞ継ぎをあえて見せる構造は、ウェグナーが生涯を通じて重視した「職人技そのものをデザインの一部とする」哲学を明確に示しています。

APストーレン社は、パパベアチェアやオックスチェアといった張りぐるみ作品を数多く手掛けた工房であり、AP64は両者の協力関係が最高潮に達した時期に誕生しました。短い製造期間のため現存数は限られており、デニッシュ・モダンの歴史において特に希少な存在となっています。

フレームにはオークやチークに加えてローズウッドも用いられ、高級素材によって作品の存在感が際立っています。シートクッションと背クッションは快適なリクライニングを意識して設計されており、視覚的な厳格さと身体的な柔らかさが共存するデザインとなっています。

AP64シリーズは、イージーチェア、2人掛けソファ(推定)、3人掛けソファといったバリエーションが存在します。それぞれが同じデザイン言語を共有しながらも、空間に合わせた異なる存在感を放ちます。ウェグナーの理念「オーガニック・ファンクショナリズム」が完成度高く具現化された静謐な傑作といえるでしょう。


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