AP69 New Papa Bear Chair | ニューパパベアチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1968
Material: Oak, Teak
Size: W91-94 × D90-95 × H91-100 cm


Story

ニューパパベアチェア AP69は、1950年に発表されたパパベアチェア AP19を再解釈した作品です。オリジナルが持つ包容力と安定感を引き継ぎつつ、1960年代後半のデザイン潮流を反映し、より彫刻的で大胆な造形へと進化しています。

最大の特徴は、大きく広がった扁平なアームにあります。これは単なる機能的変更ではなく、オックスチェアなど同時期の作品に見られる「力強さ」と「遊び心」を表現する意図が込められています。座る人が自由に足をアーム下に通せる構造は、人間工学への深い理解を示すものであり、快適性と可動性の両立を実現しています。

背もたれのデザインもまた、時代の変化を映し出しています。AP19がボタン留めの装飾を備えていたのに対し、AP69では中央に窪みを持たせた滑らかなラインに刷新されました。これは1960年代後半に求められた、シンプルでモダンな表現の追求に応えたものです。

内部構造においても、AP19の馬毛やヤシ繊維といった天然素材に代わり、AP69ではウレタンが採用されました。これは効率的な生産と新素材の導入を反映した選択であり、伝統から革新へと移行するデンマーク家具の一側面を示しています。

しかし商業的には成功を収めることができず、AP69の製造数はごくわずかにとどまりました。その結果、この椅子は現在では極めて希少な存在となり、オリジナルのAP19とは異なる価値を帯びています。ニューパパベアチェアは、単なるバリエーションではなく、ウェグナーが時代とともに挑戦した新しい表現の証として位置づけられるべき作品です。


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