About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1957
Material: Teak Steel
Size: W1700 × D600 × H400 mm
Story
AT13は、ハンス・J・ウェグナーが1950年代後半に設計したスチール脚を持つセンターテーブルです。木製脚を用いた初期のテーブル群とは異なり、本作では木と金属を明確に対比させる構成が採用されています。これはウェグナーの設計思想が、手工芸的な表現からより建築的な構造へと展開していく過程を示す重要な一例です。
製造を担ったアンドレアス・ツック社は、テーブル製作を専門としたメーカーでした。ウェグナーは家具のカテゴリーごとに最適な工房と協働する体制を築いており、同社はテーブル分野における中核的存在でした。AT13はその協働関係の成熟期に生まれたモデルであり、精度の高い木工加工と金属構造の統合が特徴です。
天板は明確な水平性を強調した構成となっています。外周は抑制されたエッジ処理が施され、厚みを確保しながらも視覚的には軽快に見えるよう整理されています。木材の量感をそのまま示しつつ、過度な装飾を排した造形は、ウェグナーの構造的合理主義を体現しています。
脚部にはスチールが採用され、ハの字型に外側へ広がる構造となっています。このスプレイドレッグは視覚的な軽さを生み出すだけでなく、広い接地面によって安定性を確保する合理的な設計です。細い金属脚が天板を持ち上げることで、水平面が空間に浮かぶような印象を与えます。木と金属という異素材の対比は、装飾的効果ではなく、構造の役割分担を明確に示すための設計判断です。
AT13は、コペンハーゲンのカストルップ空港のために設計された家具群と構造的共通性を持つとされます。公共空間での使用を前提とした耐久性と視覚的秩序が求められた背景の中で、スチール構造は合理的な選択でした。空間に強い水平軸を形成する天板と、軽快な脚部の組み合わせは、建築的スケールに対応する家具として構想されています。
アンドレアス・ツック社は1970年代初頭に閉鎖されましたが、AT13はその時代を象徴するモデルの一つです。木工技術と金属加工の融合は、ウェグナーが追求したノルディック・ファンクショナリズムの発展形ともいえます。機能と構造を明確に示しながら、空間との関係性を慎重に設計する姿勢が、本作には一貫して表れています。
AT13は単なるセンターテーブルではなく、建築的思考に基づいて構成された家具です。素材、比例、構造の関係を整理し、余分な要素を排することで成立するその姿は、ウェグナーの設計思想が金属という新たな要素を取り込みながら深化したことを示しています。