About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1950s–1960s
Material: Teak, Oak
Size: W160 × D100 × H72 cm(拡張時 W280 × D100 × H72 cm)
Story
AT312ダイニングテーブルは、デンマークモダンデザインの黄金期を象徴する作品であり、ハンス・J・ウェグナーの「オーガニック・ファンクショナリズム」を体現しています。シンプルでありながら、木材の持つ質感や構造美を引き立てるデザインは、彼の哲学そのものを反映しています。
このテーブルの特徴は、天板下に収納されたドローリーフ機構にあります。リーフを引き出すことで簡単に拡張でき、日常的な使用から大人数の集まりまで柔軟に対応します。使用しないときには完全に隠れるため、すっきりとしたラインが保たれる点も大きな魅力です。
天板にはチーク材、脚部にはオーク材が用いられることが多く、この素材の対比は軽快で視覚的な浮遊感を生み出しています。天板の端部は柔らかく丸みを帯びており、幕板には緩やかな曲線が施されるなど、細部に至るまで彫刻的な美しさが込められています。
また、脚部は円形で先細りのフォルムを持ち、外側にわずかに傾斜して配置されています。この構造は安定性を高めると同時に、全体に優雅で調和の取れた印象を与えます。ウェグナーが木工職人として培った技術と、アンドレアス・ツック社の熟練した製造技術が見事に融合した結果といえます。
AT312は、派手な装飾に頼らず、素材と構造そのものを美の表現として昇華させた家具です。その静かで洗練された存在感は、時を超えて現代の空間にも自然に溶け込み、デンマークモダンデザインの普遍的な価値を今日に伝えています。
