About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Andreas Tuck(アンドレアス・ツック)
Year: 1959
Material: Teak, Oak
Size: W695-1205 × D600 × H600 mm
Story
AT32は、ハンス・J・ウェグナーがアンドレアス・ツックのために手がけたドロップリーフ仕様のソファテーブルです。ツックはウェグナーの板物家具を担った重要なパートナーであり、拡張機構を伴うテーブルにおいて、設計意図を高い精度で製品へ結実させる技術を備えていました。本作は、その協働の成果が日常の道具として端正にまとまった一例といえます。
AT32の核は、用途に応じて天板の使い方を変えられる構造にあります。左右のリーフは必要なときにだけ展開でき、閉じた状態では空間を圧迫しにくく、広げた状態では作業面を確保できます。機能が前面に出過ぎないのは、ウェグナーが機構を造形の中へ静かに統合しているためです。可動部はあくまで使い手の動作に寄り添い、見た目の輪郭は崩しません。
また、天板下に設けられた棚は、収納という役割に留まらず、全体の構成を引き締める要素として働きます。上部の水平面と下部の水平面が呼応することで、軽快さの中に安定した骨格が生まれます。脚部とフレームは直線を基調としながら、角の処理や接合の流れによって硬さを残さず、触感を含めた穏やかな完成度へ導かれています。
素材の切り替えは装飾ではなく、部材ごとの役割を読みやすくするための設計言語として用いられています。天板と構造体が同一の表情に均されるのではなく、要素が整理されているからこそ、可動機構を持つ家具でありながら印象が散りません。ソファ周りの生活行為に合わせて形を変えつつ、室内の秩序を保ち続ける点に、ウェグナーとツックの協働が到達した実用と美の均衡が示されています。