AV Egoist Chaise Longue | エゴイスト シェーズロング


About

Designer: Arne Vodder(アルネ・ヴォッダー)
Manufacturer: Sibast Furniture(シバスト・ファニチャー)
Year: 1951
Material: Oak / Walnut / Woven Leather
Size: W59 × D140 × H96 cm


Story

アルネ・ヴォッダーが1951年にデザインした「AV Egoist Chaise Longue(エゴイスト シェーズロング)」は、彼の作品の中でも特に個人的な意味を持つ傑作です。発表当時はわずかな数量しか生産されなかったため、長らく幻の作品とされてきました。しかし、ヴォッダーの息子であるマイケル・ヴォッダー氏の協力のもと、シバスト・ファニチャーがオリジナルの図面を用いて忠実に復刻したことで、再び脚光を浴びています。

この作品は、ヴォッダーが「自分のために作った」と語るほどの思い入れを持つもので、デンマーク・モダニズムが重視した「個人の快適さ」と「静けさ」を象徴する家具です。利用者が完全にリラックスできることを目的として設計されており、足を伸ばすための十分な奥行きと、頭部を支えるヘッドレスト、そして飲み物を置くための統合型サイドテーブルを備えています。これらの要素が一体化された構造は、家具全体を彫刻的な造形にまとめ上げています。

フレームはFSC認証を受けたオークまたはウォルナット無垢材で構成され、成形木製ベニヤを併用することで滑らかな曲線と高い強度を両立しています。座面には幅広のフルグレインレザーを織り込んだシートが使用されており、使用者の身体に柔軟に適応します。この織り革は時間の経過とともに美しい経年変化を見せ、デンマーク家具らしい素材の誠実さを体現しています。

また、AV Egoistの構造的特徴として、サイドテーブルがフレームの延長線上に自然に統合されている点が挙げられます。これは単なる機能的要素ではなく、ヴォッダーが追求した「生活の動作と美の融合」を象徴するデザイン手法であり、家具全体の流麗なラインと有機的なプロポーションを生み出しています。

1950年代当時、このような複雑な構造をもつ家具を製造できるのは、シバスト・ファニチャーの熟練した職人技術があってこそでした。両者の協働はヴォッダー作品の中でも特に緊密であり、エゴイストはその信頼関係の象徴的成果といえます。現在の復刻版は、当時の手描き図面と資料に忠実に基づき製作されており、オリジナルの美学と構造を高い精度で再現しています。

AV Egoist Chaise Longueは、ヴォッダーのデザイン哲学が結実した「私的な贅沢」と「時代を超越した美学」の象徴です。シバストによる復刻は、デンマークモダンの精神を現代に継承する文化的意義を持ち、この作品の本質的な価値を改めて浮かび上がらせています。

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