B123 Aarhus City Hall Chair | オーフス市庁舎チェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Plan møbler(プランモブラー)
Year: 1942
Material: Oak, Pine, Mahogany, Leather, Velvet
Size: Armchair H88 × W66 × D56 cm / SH48 cm, Side chair H85–86 × W50 × D44–48 cm


Story

オーフス市庁舎チェアは、デンマーク近代建築の金字塔「オーフス市庁舎」のために制作された特別な家具であり、若き日のハンス・J・ウェグナーが建築と一体化したデザインを初めて実践した作品です。1937年にアルネ・ヤコブセンとエリック・モラーが設計を担当し、建築を「ゲザムトクンストヴェルク(総合芸術)」として構想。その一環として、家具もまた建物専用にデザインされました。

ウェグナーは1938年にプロジェクトへ加わり、市庁舎のための家具全般を任されました。彼が担った役割は、単なる椅子のデザインにとどまらず、空間・素材・光との調和を重視した家具の在り方を築くことでした。この経験は、彼のデザイン哲学「非常に高品質の平凡なもの」を形成する決定的な修業の場となりました。

市庁舎チェアには、地元職人による特注品と、プランモブラーが製造した量産品の二系統が存在しました。議場や応接室には職人によるマホガニーやブナ材を用いた一点物が置かれ、事務棟のオフィスにはオーク材やパイン材を使った量産品が導入されました。この二重構造は、公共建築における「儀式性」と「日常性」を見事に分けて体現しています。

プランモブラー製のチェアは、シンプルで頑丈な構造を持ち、オーク材フレームにグリーンベルベットやレザーを張った仕様が多く見られます。市庁舎の冷たい大理石と対比するように温かみを演出し、機能性と快適性を兼ね備えた家具として職員の日常業務を支えました。

ウェグナーの名前は当時表に出ることはなく、知的財産権はヤコブセンとモラーに帰属しました。しかし彼は、この経験を基盤にチャイナチェアやYチェアなどへと進化するデザインの系譜を築きました。市庁舎チェアは、ウェグナーのキャリアの出発点に位置づけられる重要な作品であり、後の巨匠としての歩みを予感させる初期傑作なのです。

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