BM62 Armchair | アームチェア

About

Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: P. Lauritzen(ピー・ラウリッツェン) / Fredericia Furniture(フレデリシア)
Year: 1957
Material: Oak, Cane wicker
Size: W 60 × D 49.5 × H 76.5 × SH 45.5 cm


Story

BM 62 アームチェアは、ボーエ・モーエンセンが1957年に発表した機能主義の精神を体現する作品です。無駄を排した構造と堅牢な造りは、彼の哲学「人々に奉仕する家具」を明確に示しています。アームレスのBM 61と対をなすモデルであり、同じ構造原理を共有しています。

フレームには無垢のオーク材が用いられ、角部には露出したフィンガージョイントが採用されています。この接合技術は強度を確保すると同時に、構造そのものを意匠として見せるデザイン的特徴となっています。細身でありながら頑丈なフレームは、視覚的な軽快さと耐久性を両立しています。

座面と背もたれには籐(ラタン)が手作業で編み込まれ、通気性と自然な弾力を生み出しています。クッション材を用いない「フォームフリー」の構造は、持続可能性と快適性を兼ね備えた先見的な選択であり、現代的なサステナビリティの価値観とも響き合います。

脚部には前後をつなぐスレッドベースが採用され、カーペットの上でも滑らかに動かすことができます。この合理的な構造は、当時の輸出市場、特にアメリカやヨーロッパの生活様式を意識したものと考えられます。実用性と日常生活への洞察を融合させたデザインは、まさにモーエンセンらしい人間中心主義の表れです。

製造体制の面では、初期の生産をP. Lauritzenが担い、その後はFredericia Furnitureに引き継がれました。この移行は、職人的な小規模工房から大規模な工場生産へとデンマーク家具産業が進化していく過程を示す好例です。BM 62は、その変遷の中で誕生し、クラフトと産業の接点を象徴する作品となっています。

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