BO64 Sofa | ソファ


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Bovirke(ボヴィルケ)
Year: 1946
Material: Beech, Teak, Rosewood, Fabric, Leather
Size: W180 × D80 × H80 × SH45 cm


Story

BO64ソファは、フィン・ユールが建築家としての活動から家具デザインへと軸足を移しつつあった過渡期に誕生した作品です。デンマーク家具が機能主義一辺倒から脱却し、芸術性と構造表現を両立させようとする1940年代後半、その潮流の中でBO64は「彫刻的モダニズム」を体現する存在として生まれました。

ボヴィルケ(Bovirke)との協働によって製造されたこのソファは、ユール特有の有機的な曲線と立体的な構造を高い精度で実現しています。戦後の素材制約を背景に、初期モデルではビーチ材が主に用いられましたが、後年の輸出モデルではチークやローズウッドなどの希少材も採用され、より国際的な市場へ展開されました。

BO64のフレームは、当時主流であった軽量な直線的デザインとは異なり、重厚で立体的な構造を持ちます。アームから背面へと流れるようなカーブは視覚的な安定感を与えると同時に、内部には人間工学的な快適性が追求されています。クッションは厚みと弾力を備え、座る人を包み込むような感覚を生み出します。

このソファには、後のチーフテンチェアやベイカーソファで顕著となる「分離構造(Separated Structure)」の萌芽がすでに見られます。座面とフレームが視覚的に独立し、あたかも浮遊しているかのように見せる構造的演出は、フィン・ユールが家具を彫刻的作品として再定義していくプロセスの第一歩でした。

BO64は1946年頃にデザインされ、1950年代を通じて製造が続けられました。建築と家具、構造と造形の境界を曖昧にしながら、デンマーク・モダンに新たな方向性を示したこの作品は、今日でもフィン・ユールの哲学的出発点として高く評価されています。

 

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