Story
Bornholms Møbelfabrik(ボーンホルムス・モブラー)は、デンマークのバルト海に浮かぶボーンホルム島ネクソに拠点を構えた家具工房である。活動期間は1940年代初頭から1980年代後半にかけてであり、デンマーク・モダンの黄金期と重なる。創業者でありデザイナーでもあったヨハネス・ソス(Johannes Sorth)の強い指導のもと、同工房は一貫して高品質な箱物家具を製造した。
特に特徴的なのは「作家主義」とも言える体制である。多くの工房が複数デザイナーを起用したのに対し、Bornholms Møbelfabrikはソスの統一されたビジョンに基づき製作を行い、結果として強い一貫性をもつコレクションを形成した。家具の多くはブックケースやセクレタリーといった収納家具で、都市化の進展に伴う省スペース家具の需要に応えるものであった。
また、ボーンホルム島という「工芸の島」の立地は、工房のアイデンティティに大きな意味を与えた。自然環境に育まれた木材や職人文化の蓄積は家具の温かみや質感に直結し、顧客には単なる家具以上の「島の物語」を提供したのである。
About
Year:1942 – 1988
President:Johannes Sorth
Designer:Johannes Sorth(ヨハネス・ソス)
Place:Nexø, Bornholm(ネクソ、ボーンホルム島)
History
1942:Bornholms Møbelfabrik設立(ネクソに拠点を構える)
1940年代後半:Johannes Sorthが箱物家具の製造を開始
1950年代:チーク材とローズウッドを主素材とするブックケースやセクレタリーを展開
1952:代表作「Bornholmerreolen(ボーンホルム・ブックキャビネット)」を発表
1955:楕円形のオーバル・ペデスタル・キャビネット(モデル205)を製造開始
1960:都市化に伴う需要増に応じ、多機能家具シリーズを拡充
1963:モデル330-59のブックケースを市場投入
1965:ローズウッドを使用した限定キャビネットを製造、国際的な輸出を強化
1967:王侯貴族や中東のシークへ家具を納品、工房の国際的評価が確立
1970:タンブール扉を用いたビューローが人気を博す
1972:オーク材やウォールナットを採用した製品群を追加
1975:国内外のデザイン雑誌で高評価を受ける
1978:工房の家具がドイツやイギリス市場で再注目される
1980:BMスタンプを用いた製品が確認される(Bornholms Møbelfabrikの頭文字)
1983:徐々に生産縮小が始まる
1988:家具製造を終了し、工房としての活動を閉じる
2001:工房跡地が「Møbelfabrikken」として再生され、ビジネスハブに転用
以降:建物は地域文化と創造産業の拠点として存続
Furniture
・Bornholmerreolen(ブックキャビネット/セクレタリー)
・Oval Pedestal Cabinet 205 | オーバル・ペデスタル・キャビネット
・Bookcase Cabinet 330-59 | ブックケース・キャビネット
・Bookcase | ブックケース
・Sideboard | サイドボード
・Chest of Drawers | チェスト
・Desk Model 4 | デスク