Bovirke | ボヴィルケ


Story

Bovirke(ボヴィルケ)は、デンマーク・モダンの黄金期において特異な役割を担った家具工房です。その存在は短命でしたが、フィン・ユールをはじめとする革新的なデザイナーとの協業によって、デザイン史に決定的な影響を残しました。

創業者ポウル・H・ルンドは、従来の職人主導の少量生産ではなく、より工業的な手法を導入することで、複雑で彫刻的なユールのデザインを広範に普及させる可能性を見出しました。ボヴィルケは、単なる製造業者ではなく、デザインと生産を結びつける触媒として機能し、ユール作品の普及を実現する拠点となったのです。

特に1948年の「New Home」展は、ボヴィルケとユールの協業を決定づける舞台となりました。この展示会では、48チェアやEye Tableを含む数々の名作が一挙に発表され、家具を超えて空間全体を設計するユールの哲学が提示されました。

また、アルネ・ヴォッダーやエリック・オーレ・ヨーエンセンら、ユール以外の才能とも協働し、木材から金属、スエードに至る多様な素材を駆使する先進的なアプローチを採用しました。結果として、ボヴィルケはモダンデザインの実験場であり、同時に実用的な製造拠点としての役割を果たしました。

その歩みは1960年代に終息しましたが、今日「ハウス・オブ・フィン・ユール」がBovirke Tableを復刻し、国内生産と伝統的職人技の継承を通じてその遺産を受け継いでいます。ボヴィルケは、デンマーク・モダンの核心に存在した「革新と普及のバランス」を体現する工房であり、その哲学は現代においても生き続けています。


About

Year:1940年代–1960年代
President:Poul H. Lund(ポウル・H・ルンド)
Designer:Finn Juhl(フィン・ユール)、Arne Vodder(アルネ・ヴォッダー)、Erik Ole Jørgensen(エリック・オーレ・ヨーエンセン)、Kai Lyngfeldt Larsen(カイ・リングフェルト・ラーセン)
Place:Vejle(ヴェーイェ)


History

1940年代:デンマーク・ヴェーイェにてBovirke設立。
1943:フィン・ユールがFireplace Chairの原型を設計。後にBovirkeから発表される下地となる。
1945:ポウル・H・ルンドが経営体制を整え、ユールとの協業を本格化。
1946:ユールがBO55 Sheepskin Setteeをデザイン。
1947:ユールによる48チェアの試作が進められる。
1948:「New Home」展に出展。Bovirke Table、48チェア、46ソファ、Eye Tableを一挙発表。
1949:BO59 Fireplace Chairを発表。ユールの彫刻的アプローチを量産可能にした重要なモデル。
1950:カイ・リングフェルト・ラーセンがSafari Armchairを発表。
1951:BO64ソファの製作開始。
1952:アルネ・ヴォッダーがBovirkeとの協業を開始。
1953:エリック・オーレ・ヨーエンセンがBO 361ラウンジチェアを発表。
1953:ユールがBO69デスクをデザイン。多色引き出しを備える希少なモデル。
1954:ヴォッダーによる収納家具シリーズを展開。
1955:ユールが新作ラウンジチェアを発表。Bovirkeの製造力が評価される。
1956:ヴォッダーがModel BO85 “Boomerang”デスクを発表。
1957:ユールのBO72アームチェアが輸出向けに製作開始。
1958:Bovirkeが生産拡大。国内外に作品を供給。
1960:ユール作品の一部がBo-Exラベルで輸出される。
1962:ヴォッダーやヨーエンセンのモデルが追加され、ラインナップが多様化。
1965:デンマーク家具産業の変化により生産縮小。
1968:工房閉鎖。活動を終了。
1990年代:フィン・ユール作品の再評価が進み、Bovirke製造品の希少性が認識される。
2000年代:「ハウス・オブ・フィン・ユール」がBovirke Tableを復刻。遺産を継承。


Furniture

・Bovirke Table BO62
・Fireplace Chair BO59
・Sofa BO64
・Desk BO69
・Armchair BO72
・Sheepskin Settee BO55
・Boomerang Desk BO85
・Lounge Chair BO361
・Safari Armchair


Imprint/Label

 

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