About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Bovirke(ボヴィルケ)
Year: 1948
Material: Oak, Walnut, Pine, Veneer, Linoleum
Size: W140 × D90 × H73 cm(伸長時最大L238 cm)
Story
ボヴィルケ・テーブルは、1948年にフィン・ユールが設計し、ボヴィルケ社によって製造されたダイニングテーブルです。戦後のデンマークにおいて、重厚な伝統様式から軽快で現代的なライフスタイルへと移行する時代の転換点に生まれた本作は、機能主義から有機的モダニズムへの橋渡しを示す重要な作品です。
ユールは彫刻的感性を家具に持ち込み、構造を「浮かせる」ように見せる造形を追求しました。ボヴィルケ・テーブルでは、脚先(トウ)をウォルナットで切り替え、視覚的な軽さと重力からの解放を演出しています。木材の異素材組み合わせによる「彫刻的分離」は、後年のユール作品にも通底する重要な設計原理です。
また、このテーブルの大きな特徴のひとつは、波型の貫(クロスバー)構造です。中央部に湾曲をもたせることで、着席時に脚の自由な動きを確保し、機能と快適性を同時に実現しています。この人体工学的な配慮は、同時期の46チェアやリーディングチェアと共通する、有機的なフォルムとの整合性をもたらしています。
伸長式モデル(FJ4890)では、内部格納型のリーフ機構を採用しており、天板下に補助板を収納することが可能です。内部摺動部にはパイン材(松材)が用いられ、摩擦の少ない滑らかな操作性を実現しています。ユールは外観に高級材を使いながらも、機能部材に合理的な素材を選択することで、美と実用の調和を図りました。
1948年のコペンハーゲン「新しい家」展で初公開された本作は、48チェアや46ソファとともに発表され、ボヴィルケとの協業を象徴する代表作となりました。芸術的理想と産業的製造の融合というテーマを具現化したこのテーブルは、ユールのデザインが工房単位の職人制作から工業生産へと拡張していく過程を示す記念碑的な作品です。現在では、ハウス・オブ・フィン・ユールによってオリジナルの設計思想を忠実に再現した復刻版が製造されています。