Story
C.M.マドセン工房は、デンマーク南部のハールビーに拠点を置いた家具メーカーであり、デンマークモダンの黄金時代を支えた重要なキャビネットメーカーのひとつです。その歴史は、デザイナーと職人の協働による「形態と実行の結合」を体現したケーススタディとして評価されています。
同社は1919年に創業し、当初は建築業を営んでいましたが、1930年代半ばに家具製造へと転換しました。戦後の需要拡大期には工場を再建・拡張し、ボーエ・モーエンセンやハンス・J・ウェグナーといった巨匠たちの作品を製造する主要な拠点となりました。
マドセンの工場は、職人的な技術を維持しつつ、工業的規模での生産を実現できた点で特異な存在でした。特に、モーエンセンの「チャイナシリーズ」やウェグナーの「Wシリーズチェア」などは、同社の高い生産技術なしには広く普及し得なかった作品群です。
1981年に閉鎖されるまでの62年間、C.M.マドセンは「デザインを世界に届けるための実現者」としてデンマークモダンに貢献しました。その遺産は、今日でも高く評価され、真正性を示す刻印やラベルはコレクターにとって大切な証となっています。
About
Year:1919 – 1981
President:C.M. Madsen
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)、Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Place:Haarby(ハールビー)
History
1919:C.M.マドセンがハールビーにて工房を創設。当初は建築業を営む
1934:建築業から家具製造へと転換。在庫家具の生産を開始
1939:地元市場向けにチェアやテーブルを供給し始める
1944:創業25周年を迎え、記念出版物が制作される
1945:戦後の需要増に伴い、建築家や家具デザイナーとの協業を開始
1946:ハンス・J・ウェグナーとの初期接触が確認される
1947:大火災で工場が壊滅。直後に2倍規模で再建される
1948:新工場が稼働を開始。生産設備を近代化
1950:ボーエ・モーエンセンと正式に協業を開始
1951:ウェグナーと契約を結び、Wシリーズの製造に着手
1953:W1・W2チェアが発表され、国外市場でも販売が拡大
1955:モーエンセンの「チャイナシリーズ」のブックケースやキャビネットを製造
1957:製品の輸出を本格化。アメリカ、イギリス、ベネズエラ市場に進出
1960:BM1チェアを製造開始。シェーカースタイルの象徴として人気を博す
1962:シェーカーテーブル(モデル1181)の製造を拡大
1965:工場設備を刷新し、大規模輸出体制を確立
1967:ヨーロッパ各国で販売網を強化。オーストラリア市場にも進出
1970:デンマーク家具産業全体が不況に直面する中で減産を余儀なくされる
1973:オイルショックの影響により輸出が急減
1975:国内市場に注力するも需要が縮小
1977:従業員数が約40名にまで減少
1979:資金繰り悪化により3月に支払い停止。8月15日に破産宣告
1980:新オーナーが事業継続を試みるが短期間で失敗
1981:9月12日、工場が最終閉鎖。62年の歴史に幕を下ろす
以後:ハールビー地方歴史アーカイブに多数の資料が保存され、研究対象となる
Furniture
・W1 Dining Chair
・W2 Dining Chair
・BM1 Chair
・China Bookcase (Low)
・China Bookcase (High)
・China Bookcase (Rosewood)
・China Cabinet
・Shaker Dining Table 1181