About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1982
Material: Oak, Beech
Size: W138-236 × D90 × H72 cm
Story
CH006 エクステンションテーブルは、1982年にハンス・J・ウェグナーが68歳の円熟期にデザインした作品です。当時のデザイン界ではポストモダニズムが席巻していましたが、ウェグナーは流行に迎合することなく、自らの哲学である「オーガニック・ファンクショナリズム」を体現する機能的かつ普遍的なテーブルを生み出しました。
両端に備えられた半円形のドロップリーフにより、人数やシーンに応じてサイズを自在に変化させられるこのテーブルは、都市生活における限られた空間を有効に活用できるよう設計されています。片側だけを折り畳んで壁付けすることも可能で、柔軟なレイアウトを実現する点は他の伸長式テーブルには見られない特徴です。
素材には無垢のオーク材またはビーチ材が用いられ、脚は外側に開く末広がりのデザインによって安定性と軽やかさを両立しています。天板の木目は「短辺ジョイント」と呼ばれる技法で組み合わされ、自然素材の美しさを強調しながら資源を効率的に活用しています。
さらに、脚間は128cmと広く設計され、ウェグナーの代表作であるCH24 Yチェアを2脚並べてもゆったりと収まるよう配慮されています。家具を単体でなく「エコシステム」として捉えたウェグナーの視点が明確に表れており、ダイニングチェアとの組み合わせで多彩な表情を生み出します。
製造を担うカール・ハンセン&サン社は、ウェグナー作品を最も多く手がけるメーカーであり、持続可能な木材と熟練した職人技によって、このテーブルを高い品質で現代に伝え続けています。CH006は、単なる機能的家具にとどまらず、世代を超えて受け継がれるべき「静かなる知性」を体現する傑作なのです。