About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1950
Material: Oak, Beech, Walnut, Teak, Paper cord, Rattan
Size: W50.3 × D50.3 × H78.6 cm / SH44.5 cm
Story
CH23チェアは、1950年にハンス・J・ウェグナーがカール・ハンセン&サンのためにデザインした初期の名作群のひとつです。CH22、CH24(Yチェア)、CH25と共に発表されたこの椅子は、当初最も市場で支持されるベストセラーでした。
アームを持たないシンプルなフォルムは、ダイニングチェアとしての実用性に優れ、軽やかでありながら安定感を備えています。特に、背もたれに施された十字型の埋め木(象嵌)は、構造を補強する機能を持ちながら装飾としても際立ち、ウェグナーの「誠実な構造」という哲学を象徴しています。
座面はペーパーコードを用いた二重編みによって形成されており、高い耐久性と快適性を誇ります。ヴィンテージのごく初期モデルには、籐(ラタン)張りの希少なバリエーションも存在し、コレクターから特に珍重されています。
CH23は一度生産中止となり「幻の椅子」と呼ばれた時期もありましたが、2017年にオリジナル図面に基づいて復刻されました。現在はオークやウォルナットを用いた多様な仕上げで生産され、再びデニッシュモダンの重要な作品として広く認知されています。
その静かで控えめな佇まいは、日常生活に自然に溶け込みながらも、使い手に深い満足感を与える一脚です。ウェグナーが目指した「質の高い平凡さ」を最も純粋に体現する椅子のひとつといえるでしょう。

