About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1965
Material: Beech, Natural Webbing, Lacquer
Size: 幅44 × 奥行40 × 高さ78 cm
Story
CH43チェアは、1965年にハンス・J・ウェグナーがデザインし、カール・ハンセン&サン社から発表されたスタッキングチェアです。彼が手掛けた初期の代表作CH22やCH24(ウィッシュボーンチェア)とは15年の隔たりがあり、成熟したデザイン哲学の結晶といえる作品です。
この椅子の最大の特徴は、積み重ね可能という明確な機能性を備えている点にあります。ウェグナーは木材という伝統素材と手仕事の技術を駆使し、一般的に金属やプラスチックが多用されるスタッキングチェアの世界に、無垢材と職人技を持ち込みました。その結果、温かみと耐久性を兼ね備えた独創的な椅子が誕生しました。
素材には堅牢なブナ材が選ばれ、座面には天然のウェビングが使用されました。仕上げにはナチュラルと赤のラッカー仕上げが存在し、特に赤ラッカーは耐久性と実用性を高めると同時に、グラフィカルでモダンな印象を与えます。ウェグナーが美観と実用性を同等に重視していたことが、この選択からも読み取れます。
スタッキング機構は単純に見えて緻密に設計されており、背や脚の角度、座面寸法が積み重ね時の安定性を確保しています。彼の「有機的機能主義」が、構造そのものの幾何学に落とし込まれた好例です。
今日、CH43は生産が終了しており、オークション市場やヴィンテージディーラーを通じて流通する希少な作品です。ウィッシュボーンチェアのように継続的に製造されることはなかったものの、その希少性と位置づけはコレクターにとって特別な意味を持っています。

