CH45 Rocking Chair | ロッキングチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1965
Material: Oak, Paper cord
Size: W61 × D82 × H106 cm / SH39 cm


Story

CH45ロッキングチェアは、1965年にハンス・J・ウェグナーによってデザインされ、わずかな期間のみ生産された後に姿を消した幻の作品です。2023年、カール・ハンセン&サンによる復刻により再び市場に登場し、失われた名作が現代の空間に甦りました。復刻は単なる商業的決定ではなく、ウェグナーの思想を現代に改めて提示する文化的な出来事として注目されました。

この椅子の特徴は、アメリカのシェーカー様式を起点としながら、北欧的な感性で再構築された構造美にあります。背もたれのラダーバックは幾何学的な厳格さを示しつつ、脚部やアームの曲線が柔らかさを添え、緊張と調和のバランスを生み出しています。特に後部が持ち上がったアームレストは、強固な接合を成立させるための必然性から生まれた造形であり、構造と美の融合を体現しています。

座面は職人の手によって約1.5時間かけて編み上げられるペーパーコードで構成され、耐久性と快適性を兼ね備えています。また、背もたれ上部にはネックピローを吊るすための溝が設けられ、装飾性を排した機能的なディテールが宿っています。これらの工夫は、ウェグナーの「無駄を省き、本質を残す」というデザイン哲学を端的に示しています。

CH45は「座る」「揺れる」「立ち上がる」という人間の自然な動作を支えるよう設計されており、従来のラウンジチェアのように沈み込むのではなく、活動と休息の間を流れるように行き来できる「能動的な休息」のための椅子です。39cmという比較的高めの座面高も、立ち上がりやすさを意識した設計の一端です。

同じくウェグナーが手掛けた1944年のJ16ロッキングチェアと比較すると、CH45は曲線的で詩的な表現から、より構築的で抑制されたフォルムへと進化していることがわかります。そこには、彼が生涯を通じて追求した「絶え間ない純化」の哲学が結晶しています。復刻されたCH45は、単なる過去の再現ではなく、時代を超えた普遍的価値を再提示する象徴的な存在なのです。

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