Dot Stool Model3170 | ドットスツール


About

Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1953
Material: Laminated plywood, steel
Size: W34 × D34 × H44 cm


Story

ドットスツール Model3170は、アルネ・ヤコブセンがフリッツ・ハンセンと協働して1953年に発表した成形合板スツールです。アントチェアの開発で培われた技術を活用し、座面を円形に単純化することで、成形合板の合理化と効率化を徹底的に追求しました。

このスツールは、1956年に竣工したロズオウア市庁舎のために設計され、建築と家具を統合するヤコブセンの「トータルデザイン」哲学を象徴する存在となりました。建築の幾何学的な軽快さと合理性を反映し、小型で機能的なドットスツールは、公共空間において現代的なモラルを体現する家具として高く評価されました。

座面は積層された薄板合板で構成され、円形のシンプルな形態ながら高い耐久性と弾力性を備えています。スタッキング機能を持ち、収納や配置替えが容易な点も公共空間向けの設計思想を示しています。さらに、脚部と座面の接合部にはカバーが設けられ、工業製品でありながら仕上げの美しさを失わないよう配慮されています。

当初は3本脚モデルが製造され、視覚的な軽快さと床面への安定性を確保しましたが、1970年代には市場の要請に応じて4本脚モデルも登場しました。これはデザインの純粋性と商業的実用性のせめぎ合いを象徴する変遷であり、今日では両モデルが併売され、利用環境や用途に応じた選択が可能となっています。

2009年にはフリッツ・ハンセンのクラシックコレクションの一部として復刻され、現代の生活に合わせた「ハイドット(High Dot)」と呼ばれるカウンタースツール版も加わりました。ドットスツールは70年近く経た現在もなお、オフィスや公共空間、住宅のいずれにおいても活用され続け、成形合板家具の歴史における重要な架け橋として位置づけられています。

 

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