Story
Edmund Jørgensen(エドムンド・ヨルゲンセン)は、デンマーク・モダンの黄金期に活動した多才な家具職人(snedkermester)であり、同時代の巨匠たちの陰でありながらも重要な役割を担った存在である。彼の工房は、単なる製造拠点にとどまらず、自身の小売店を通じた直販体制を持つなど、製造から流通までを一貫して手掛けた垂直統合型のビジネスを展開していた。この柔軟かつ先見的な経営は、当時のデンマーク家具職人の中でも際立った特徴といえる。
彼の作品群は、一貫した様式主義に縛られることなく、アールデコ、ロココ・リバイバル、デンマークモダン、さらにはブルータリズム的な造形に至るまで多様であった。1930年代から40年代にかけてはアールデコの影響を受けた優美なコーヒーテーブルやシープスキン張りのソファを製作し、1950年代には象嵌細工を施したシリンダーデスクで高度な装飾的木工技術を披露した。さらに、1960年代には有機的なコーヒーテーブルや、Henning Kjærnulf(ヘニング・ケアヌルフ)の彫刻的デザイン家具の製造にも関与し、時代ごとの需要に巧みに応えた。
また、Jørgensenは他工房やデザイナーとの協働関係においても重要な役割を果たした。Kjærnulfのブルータリズム的作品を製造する一方、Gorm Møblerに対しては自身がデザインを提供するなど、製造者でありデザイナーでもある二重の立場を担った。この柔軟性は、彼が単なる職人ではなく、デンマーク家具産業全体を支える結節点として機能していたことを示している。
その工房の特徴は、どの様式を選んでも一貫して最高品質の素材と卓越した技術を基盤にしている点である。象嵌細工やマーケットリーの高度な装飾から、シンプルなチーク材テーブルの精密な接合に至るまで、細部への徹底したこだわりが感じられる。今日、彼の名はウェグナーやユールのような世界的知名度を誇るわけではないが、その作品は高品質なデンマークモダンの重要な一角を担っており、改めて評価されるべき存在である。
About
Year: 1942–
President: Edmund Jørgensen
Designer: Edmund Jørgensen
Place: Nakskov(ナクスコウ)
History
1942: デンマーク南部で「Edmund Jørgensen Furniture store」を設立
1942: Nakskovに「Edmund Jørgensen Møbelfabrik」を設立し製造を開始
1940年代: アールデコ様式のコーヒーテーブルやシープスキン張りソファを製作
1950年代: ロココ・リバイバル様式の象嵌細工シリンダーデスクを発表
1950年代: 自社店舗を通じてシリンダーデスクを販売
1950年代後半: 有機的なフォルムのキドニーシェイプ・ブーメランシェイプのサイドテーブルを製造
1960年代: Henning Kjærnulfデザインの「レイザーブレード」様式の椅子を製造
1960年代: Gorm Møbler向けにウォルナット製サイドテーブルをデザイン
1960年代: モデル10ダイニングチェア、バナナソファを製作
1960年代: セラミックタイル象嵌入りのサイドテーブルを発表
1960年代後半: 重厚なオーク材を使用したブルータリズム的作品を手掛ける
1970年代: 自社ラベルや無印作品など、多様なマーキング方式を採用
1980年代以降: 作品がオークションやディーラー市場で再評価され始める
1990年代: Jørgensenの工房に関する断片的な記録が再調査される
2000年代: デザイン史研究者やコレクターにより再発見が進む
2010年代: オークション市場でシリンダーデスクが高額で取引される
2020年代: Edmund Jørgensenの再評価が進み、研究資料として注目される
Furniture
・Cylinder Desk Chatol | シリンダーデスク
・Side Table Kidney Shape | サイドテーブル(キドニー型)
・Side Table Boomerang Shape | サイドテーブル(ブーメラン型)
・Side Table Two-tier | 二段式サイドテーブル
・Coffee Table Teak and Rosewood | コーヒーテーブル
・Dining Chair Model 10 | ダイニングチェア モデル10
・Banana Sofa | バナナソファ
・Lounge Chair High-back | ラウンジチェア
・Dining Chair Razorblade Style | ダイニングチェア(レイザーブレード様式)