Ejvind A. Johansson | アイヴァンド・A・ヨハンソン


Story

アイヴァンド・A・ヨハンソン(1923-2002)は、戦後デンマークのモダンデザイン史における「異端の機能主義者」として位置づけられるデザイナーです。ボーエ・モーエンセンが築いた機能主義の精神を継承しつつも、より彫刻的で表現豊かな方向へと進化させた点に彼の独自性があります。

彼のキャリアは、家具職人としての確かな基盤と王立芸術アカデミーでの高等教育という二重の背景に支えられていました。そのため、彼のデザインは頑丈で実用的でありながら、造形的な美しさと大胆な試みを併せ持っています。

特にFDB Møblerのチーフアーキテクトとして活躍した短い期間(1956–1958)は、彼の名をデンマーク家具史に刻む決定的な瞬間となりました。J64やJ67チェアといった作品は、民主的デザインの理念を保持しながら、従来の様式に軽やかで現代的な解釈を与えたものです。

その後、彼はIvan Gern Møbelfabrikなどの工房と協業し、「Eye Chair」に代表される芸術的で複雑な構造を持つ作品を生み出しました。これは、戦後の実用性重視の時代から、輸出を視野に入れた高級家具への移行というデンマークデザインの歴史的変遷を体現しています。

今日、ヨハンソンはハンス・J・ウェグナーやモーエンセンほどの知名度を持ちませんが、その作品群は復刻やオークション市場で再評価されつつあり、彼が残した造形の遺産は確実にデンマーク・モダンの核心をなしています。


About

Year: 1923–2002
Place: Copenhagen(コペンハーゲン)
Manufacturer: FDB Møbler(FDBモブラー)、Ivan Gern Møbelfabrik、Ludvig Pontoppidan(ルドヴィ・ポントピダン)Cado(カド)、Bo-Ex、Fredericia(フレデリシア)


History

1923: デンマークに生まれる
1940年代: 家具職人・建具職人として修業を積む
1949: 芸術工芸学校および王立芸術アカデミー家具部門を卒業
1949–1956: 独立デザイナーとして活動、Ludvig Pontoppidan社向けテーブルをデザイン
1956: 33歳でFDB Møblerのチーフアーキテクトに就任、民主的デザインを推進
1957: J64チェア、J67チェア、J63スツールをデザイン
1958: FDB Møblerを退社、独立デザイナーとして活動開始
1960: Ivan Gern Møbelfabrikと協業開始、より高級素材を用いた家具を制作
1961: 「Eye Chair(モデル84)」を発表、彫刻的デザインで高評価を獲得
1960年代: ソーイングテーブルや収納家具を設計、籐や真鍮を取り入れた機能的かつ美的作品を展開
1970年代: CadoやBo-Exと協業、住宅空間に適したモジュール家具をデザイン
1980年代: FredericiaがJ64やJ63を復刻生産
1990年代: ヨーロッパとアメリカ市場で再評価が進む
2002: コペンハーゲンにて逝去


Furniture

・J64 Chair | アームチェア
・J67 Chair | ダイニングチェア
・J63 Stool | スツール
・J65 Chair | ダイニングチェア
・Eye Chair Model 84 | アイチェア
・Model 301 Lounge Chair
・G19 Daybed | デイベッド
・Sewing Table | ソーイングテーブル
・Coffee Table Ludvig Pontoppidan
・Sideboard Ivan Gern Model 20
・Highboard Ivan Gern Model 25
・Cabinet Ivan Gern Model 30
・Dining Chair Model 60
・Armchair Model 75
・Bookcase Unit Ivan Gern Model 90
・Writing Desk Model 100
・Sofa Bo-Ex Model 200
・Dresser Ivan Gern Model 220
・Tray Table Model 240
・Serving Cart with Cane Basket

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