Erik Buch | エリック・バック


Story

エリック・バック(1923–1981)は、デンマーク・モダニズムの中で「静かなる巨匠」と称される家具デザイナーです。彼は革命的な前衛を志向するのではなく、洗練された実用性と人間工学的な快適性を追求することで知られています。作品には、師であるフィン・ユールから受け継いだ彫刻的感性と、堅実な木工技術に基づく耐久性が融合しています。

バックのキャリアは、家具職人としての見習いと、室内デザイン学校での学びという二重の基盤の上に築かれました。特にフィン・ユールから直接学んだ経験は、彼の有機的で流麗なデザイン哲学の出発点となっています。同時に、建築事務所での勤務を通じて培われた空間認識は、家具を建築環境に調和させる設計姿勢へと結実しました。

彼の代表作である「Model 49」ダイニングチェアや「Model 61」バースツールは、いずれも「フローティング・シート」と呼ばれる浮遊感ある座面を特徴としています。これは視覚的な軽やかさをもたらすだけでなく、構造上の工夫と精緻な職人技術を体現するものでした。バックは、このアイデアを師ユールの急進的な実験から洗練させ、広く市場に受け入れられる形で具現化したのです。

また、彼のデザインは過度な装飾を排し、控えめでありながら彫刻的な優雅さを保ち続けました。そのアプローチは、デンマーク家具の国際的評価を高める一翼を担い、今日に至るまで高い人気を誇ります。バックの作品群は、商業的成功と美学的完成度を兼ね備えた希少なバランスを実現したものとして、20世紀デザイン史に確固たる位置を占めています。


About

Year: 1923–1981
Place: Copenhagen(コペンハーゲン)
Manufacturer: Oddense Maskinsnedkeri(オッデンセ・マスキンスネッカリ)、Ørum Møbler(オールム・モブラー)、Chr. Christiansen(クリスチャンセン)、Dyrlund(ディルランド)


History

1923: コペンハーゲンに生まれる
1940年代前半: 家具職人C. Baggerのもとで見習いとして木工技術を習得
1947: 室内デザイン学校を卒業し、フィン・ユールに師事
1948–1949: ノルウェー・オスロの建築家マグヌス・ポールソン事務所に勤務
1949: Model 49 ダイニングチェアを発表、Oddense Maskinsnedkeriから製造開始
1950年代: コペンハーゲンで独立スタジオを設立、スネーカーラウエッツ展示会に継続出展
1955: Captain’s Chairをデザイン、Ørum Møblerから製造
1957: オーデンセに移り、新たなスタジオを開設
1960年代: Model 310 ダイニングチェアをChr. Christiansenのためにデザイン
1961: Model 61 バースツールを発表、国際的に高い評価を獲得
1960年代後半: Dyrlundのためにバーカウンターや収納家具をデザイン
1970年代: デンマーク国内外で幅広い家具コレクションを発表、輸出市場に展開
1981: オーデンセにて死去(享年57歳)


Furniture

・Model 49 Chair | ダイニングチェア
・Model 50 Armchair | アームチェア
・Captain’s Chair
・Model 61 Barstool | バースツール
・Model 310 Chair | ダイニングチェア
・Bar Counter Dyrlund | バーカウンター
・Cabinet Systems Dyrlund
・Sideboards (various models)
・Armchairs and Sofas (various models)
・Shelving Systems (Dyrlund collaboration)

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