About
Designer: Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1960
Material: Teak, Upholstery
Size: W190 × D77 × H75 cm
Story
FD128/3ソファは、デンマークの女性デザイナー、グレーテ・ヤルクによる代表的な作品のひとつです。彼女は積層合板を用いた実験的なデザインで国際的評価を受けましたが、このソファではあえて無垢のチーク材をフレームに採用し、工業化時代の製造体制に即した合理的な設計を実現しました。
直線と曲線が調和したフレームは、視覚的な軽快さと安定性を兼ね備えており、シンプルでありながらも優雅な印象を与えます。座面にはスプリングシートを備え、取り外し可能な背クッションを配することで、快適性と利便性を両立しました。さらに背クッションを外すことで、簡易ベッドとしても利用できる多目的性を持っています。
このソファの大きな特徴は、分解・組立が容易なノックダウン構造です。当時、輸出を重視したFrance & Sonの戦略に即しており、輸送効率を飛躍的に高めました。特に国際市場への展開において、梱包体積を抑え、破損リスクを減らすという実用性が大きな価値を持ちました。
また、この構造を可能にしたのは、1950年代に同社が導入したタングステンカーバイド合金鋸によるチーク材加工技術の革新でした。これにより従来は困難だった精密な無垢チーク材の大量加工が可能となり、デザイン性と工業生産性の両立が実現しました。
FD128/3ソファは、ヤルクのデザイン哲学である機能性と人間工学的配慮を反映しつつ、メーカーの技術力と輸出戦略に見事に適合した作品です。今日においても、女性デザイナーによる革新的な貢献と、デンマーク・モダンの黄金期を象徴する家具として高く評価されています。