About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen（ピーター・ヴィッツ & オルラ・モルガード＝ニールセン）
Manufacturer: France & Daverkosen（France & Son）
Year: 1960
Material: Teak, Hardwood, Fabric, Leather
Size: W175–176 × D75–78 × H72–80 × SH38–42 cm
Story
FD130/3ソファは、ピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード＝ニールセンによって1960年頃に設計された三人掛けソファであり、デンマーク・モダンの工業化時代を象徴する作品です。彼らは1944年に共同事務所を設立し、30年以上にわたる協働の中で輸出市場に対応する革新的な家具を数多く生み出しました。本作もその流れの中で誕生した代表的なプロダクトです。
最大の特徴は、ノックダウン（Knock-Down, KD）構造の採用にあります。フレームを分解可能とすることで輸送効率を飛躍的に高め、大型ソファでありながら容易に国際市場へ供給することを可能にしました。AXチェアで培われたKD技術を応用し、France & Sønの工業生産体制と結びつけることで、国際的な輸出競争力を大きく強化したのです。
デザインの面では、ソリ脚（Sleigh leg）と嘴状のアームによる構造的かつ視覚的な安定感が際立っています。無垢のチーク材や広葉樹をフレームに用い、頑丈さと軽快さを両立させました。そのコンパクトなサイズは都市部の住空間に適応し、機能性と普遍性を兼ね備えています。
座面は、下部フレーム自体にスプリングを組み込み、さらにスプリング内蔵ボックスクッションを重ねるという二重構造を採用しました。これにより、従来のデンマーク家具に比べ柔らかく快適な座り心地を実現し、アメリカ市場など国際的嗜好に応えています。張地はウールファブリックやレザーが用いられ、経年変化によって深みを増す素材感が魅力のひとつです。
製造元であるFrance & Daverkosenは1957年にFrance & Sønへと社名を改め、デンマーク家具輸出の中心企業となりました。FD130/3はその過渡期に生産され、時期によって異なる刻印やラベルが存在します。後に同社はPoul CadoviusによりCADOへ吸収されましたが、FD130/3はその直前の最盛期を象徴するプロダクトとして位置づけられています。
このソファは、デンマークデザインが国際的な成功を収めた背景にある、輸送効率、快適性、そして美学を融合させた製品です。現在も世界の美術館に収蔵され、デザイン史における重要な節目を示す存在として高く評価されています。