About
Designer: Sigvard Bernadotte(シグヴァルド・ベルナドッテ)
Manufacturer: <a href=”https://denmark-design.com/france-daverkosen/”>France & Daverkosen(France & Son)</a>
Year: 1952
Material: Teak, Beech, Leather, Wool
Size: W60 × D55 × H83 × SH45 cm
Story
FD132アームチェアは、スウェーデン王室の血筋を持ちながら工業デザインのパイオニアとなったシグヴァルド・ベルナドッテによる、唯一のFrance & Daverkosen向け家具シリーズです。1952年に発表され、翌1953年にはアメリカインテリアデザイナー協会(AID)の国際デザイン賞を受賞しました。家具としての洗練性に加え、国際市場におけるデンマーク家具の評価を大きく押し上げる契機となった作品です。
本作は、無段階で角度調整が可能な背もたれ機構を備え、読書、会話、休息といった多様な用途に柔軟に対応できる点が特徴です。さらに、回転機構を持つバリエーションも存在し、ホテルやラウンジなどのコントラクト市場において高い評価を得ました。機能性と利便性を重視したベルナドッテの工業デザイン哲学が、木製家具の枠を超えて表現されています。
FD132の構造面での最大の革新は、KD(ノックダウン)構造を採用している点です。家具を分解して輸送し、現地で容易に組み立てられるこの方式は、輸送効率を飛躍的に高め、デンマーク家具の輸出を支えました。特にアメリカ市場での展開において、この合理性は大きな強みとなり、France & Daverkosenが国際市場で優位性を確立する原動力となりました。
素材にはチーク材とブナ材が用いられ、仕上げや張地に多様性を持たせています。高級モデルではチークフレームにブラックレザーを組み合わせ、コストを抑えたモデルではブナ材に染色仕上げを施し、合成皮革やウールを用いた座面が提供されました。これにより、家庭用からコントラクト市場まで幅広い需要に対応しています。
FD132は、ベルナドッテが工業デザインで培った合理性と、France & Daverkosenの工業的製造体制が融合した稀有な成果物です。その存在は、デンマーク家具が伝統的手工業から工業化と国際市場戦略へと大きく舵を切った象徴であり、今日でもミッドセンチュリーデザインの代表的な椅子として高く評価されています。