FD164 High-back Armchair | ハイバックアームチェア


About

Designer: Arne Vodder(アルネ・ヴォダー)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1960
Material: Teak, Upholstery (Wool or Leather)
Size: W72 × D80 × H104 × SH42 cm


Story

FD164 High-back Armchairは、アルネ・ヴォダーが1960年頃に設計し、France & Sønによって製造されたリクライニング機能付きのラウンジチェアです。デンマーク・モダニズムの成熟期に登場し、快適性と工業的量産性を両立した代表作のひとつとされています。

ヴォダーは王立デンマーク芸術アカデミーでフィン・ユールに師事し、建築的な構造理解と有機的な造形美を融合させるデザイン哲学を形成しました。FD164はその哲学を体現するモデルであり、流れるような曲線を描くアームレストやチーク材の堅牢なフレームは、視覚的な美しさと構造的な強度を同時に実現しています。

この椅子の最大の特徴は、3段階に調整可能なリクライニング機構です。頭部と首を支えるハイバックデザインと厚みのある3分割クッションは、深い休息を可能にし、単なる座具ではなくラウンジ体験を提供する設計意図が明確に表れています。リクライニング機構は視覚的に隠蔽され、機能と美観が高度に調和している点も評価されています。

さらに、FD164は国際輸出市場を意識したノックダウン構造を備えており、分解・梱包が容易で輸送効率を高める設計となっています。この合理性はFrance & Sønの戦略と完全に一致し、工業生産とデザイン美学の融合を示す好例となりました。

FD164は、ヴォダーの作品群の中でも「最高の快適性」と「工業的量産性」を追求したモデルとして評価され、France & SønからCADOへと製造体制が移行した後も継続的に生産されました。その結果、この椅子は20世紀デンマーク家具史における「量産型高級家具」の成功を象徴する存在となり、今日においてもミッドセンチュリー・モダンの代表的なコレクションとして高い評価を維持しています。

 

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