About
Designer: Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen(ピーター・ヴィッツ & オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: France & Daverkosen(France & Son)
Year: 1960s
Material: Teak, Rattan
Size: W 54.5 × D 39.7 × H 49 cm
Story
FD523 Three-sided Tableは、1960年代初頭にデザインされたネストテーブルであり、デンマークモダンにおける機能主義と輸出戦略の結晶といえる作品です。設計を手掛けたのは、長年の協働で知られるピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンであり、彼らが追求した合理的かつ洗練されたデザイン哲学を端的に示す事例のひとつです。
最大の特徴は「三面構造(Three-sided Form)」にあり、従来の円形や四角形のテーブルと異なり、三角形に近い形状を採用することで空間効率を高めています。ソファのコーナーや部屋の隅に自然に収まり、使わない時には入れ子状に収納できるため、都市住宅に求められる省スペース性に応える構造となっています。
また、FD523は輸出を強く意識したノックダウン設計が施され、工具不要で分解・組み立てが可能な構造を備えています。これにより輸送時の体積を大幅に削減し、国際市場での競争力を確保することに成功しました。こうした工業的合理性は、France & Sonの高精度な製造技術と結びつき、世界中へ広く供給される基盤を築きました。
素材には耐久性と美しい木目を持つチーク材が選ばれ、フレームには無垢材、天板には突板が用いられました。一部のバリエーションには籐(ラタン)が組み込まれており、軽快さと通気性を加えながら、重厚さを和らげています。この素材の組み合わせは、機能性と美観の双方を満たす典型的なデンマークモダンの手法です。
FD523 Three-sided Tableは、デッドスペースを活用する合理的な形態、ノックダウン構造による輸送効率、そして軽快でモダンな素材感が融合した一作であり、デンマーク家具が世界市場で成功を収めるうえで欠かせない存在でした。今日においても、その幾何学的で無駄のないフォルムは高く評価され続けています。