About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1949
Material: Beech, Leather, Fabric
Size: W54 × D47 × H74 cm / SH42-45 cm
Story
ハンス・J・ウェグナーが1949年にデザインしたFH1934アームチェアは、その名が示す「1934年」とは異なり、実際にはウェグナーの創造力が頂点に達した年に生み出された作品です。1949年は同時に「ザ・ラウンドチェア」や「ウィッシュボーンチェア」が誕生した重要な年であり、この椅子もまたその潮流の一部として位置づけられます。
このモデル名「FH1934」は製造元フリッツ・ハンセン社のカタログ管理番号であり、デザイン年を指すものではありません。当時のフリッツ・ハンセンは蒸気曲げや積層合板の技術革新を進めており、ウェグナーはその職人技と伝統的な木工技術を融合させてこの椅子を完成させました。
デザインは簡潔かつ機能的でありながら、斜め後ろから見たときに最も美しいと評されるフォルムを持ちます。前脚は横木で連結され、座面からわずかに突き出す構造が特徴的です。素材にはブナ材が用いられ、多くは黒革張りの座面を備えています。丸みを帯びた肘掛けと滑らかな曲線は、ウェグナーが徒弟時代に培った木工技術への深い理解を物語っています。
この椅子は「ブル・チェア」や「カウホーンチェア」といった後の代表作に繋がる原点として位置づけられており、ウェグナーの有機的機能主義(オーガニック・ファンクショナリティ)を端的に表現した作品です。控えめながらも骨太な存在感を放ち、デンマークモダンの基盤を支える重要なピースといえます。