Giraffe Chair | ジラフチェア


About

Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1959
Material: Moulded plywood, PUR foam, upholstery, wood or steel base
Size: W49 × D55 × H124 × SH46 cm


Story

ジラフチェアは、1959年にアルネ・ヤコブセンがコペンハーゲンのSASロイヤルホテルのレストランのために特注設計した椅子です。名前の由来は、その極端に高い背もたれがキリンを思わせる造形にあります。利用者に親密な空間を与えると同時に、ホテルの効率的な運営に対応するため、狭幅に設計された点が大きな特徴です。

従来のアントチェアやセブンチェアが成形合板のシェルを外に露出させ、その美を強調したのに対し、ジラフチェアでは合板は内部の支持体として機能し、外側は一体成形のパッドと張り地で覆われています。この技術的飛躍により、より有機的で快適性に富むフォルムを実現し、同時期に登場したエッグチェアやスワンチェアと共通するデザインアプローチを示しています。

オリジナルはSASロイヤルホテルのレストラン用に製作された限定家具で、緑色の張地と木製トリム、積層木材の脚を備えていました。また、客室用にはコラムベースを持つバージョンや、支配人への贈呈用としてレザー張り・スターベース仕様の特別モデルも存在したと伝えられています。これらはヤコブセンの「建築に最適化された家具」という理念を反映したバリエーションでした。

2019年には、ヤコブセンが残した低背試作を基にした「リトル・ジラフ」がフリッツ・ハンセンより商業化されました。現代的な製造技術であるPURフォームや取り外し可能なカバーが導入され、ホテルや家庭、会議室など多様な空間に対応するデザインとして新たな生命を与えられています。

ジラフチェアは、建築と家具を統合するトータルデザイン哲学の象徴であり、ヤコブセンの人間中心主義と技術革新の融合を最も劇的に示す作品の一つです。

 

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