About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Niels Roth Andersen(ニールス・ロス・アナセン) / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィンユール)
Year: 1961
Material: Cherry, Wenge, Steel, Brass, Lacquered wood
Size: W70 × D35 × H49
Story
グローブ・キャビネットは、フィン・ユールが1961年に妻ハンネ・ヴィルヘルム・ハンセンのために特別にデザインした作品です。彼女の手袋コレクションを美しく整理するために生み出されたこのキャビネットは、極めて個人的な想いと革新的な造形が融合した、ユールのキャリアにおける重要な節目を象徴しています。
1961年のコペンハーゲン家具職人組合展で発表された際には、遊び心に満ちた色彩と造形により大きな話題を呼びました。ボーエ・モーエンセンら機能主義的なデザイナーからは批判も受けましたが、その独創性はユールの美学の進化を明確に示すものとなりました。
キャビネットの最大の特徴は、多色に塗装された引き出しです。これは、ゲーテの色彩論に強い影響を受けたユールが、家具に芸術的な表現を取り入れた象徴的な試みでした。引き出しの色彩は装飾的な役割に留まらず、実際に手袋を色ごとに整理する機能的な役割も果たしていました。
素材選びにも細心の配慮が見られます。本体には桜材が使われ、取っ手にはウェンゲ材、脚部にはスチールと真鍮が採用されました。これらの組み合わせがキャビネット全体に軽やかな印象を与え、まるで宝石箱のような魅力を放っています。
ユールの没後、この作品は1990年代にニールス・ロス・アナセン工房で少数が製作されました。未亡人ハンネ・ヴィルヘルム・ハンセンの監督のもとに作られたこれらの個体は、ユールのデザイン遺産が家族によって直接継承された特別な時代を物語る貴重な証拠です。2000年代以降は、ハウス・オブ・フィン・ユールによって再生産が続けられ、現在も世界中で高い評価を得ています。