About
Designer: Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1957
Material: Plywood, Oak, Walnut, Teak, Steel
Size: W48 × D52 × H78 × SH44 cm
Story
グランプリチェアは、アルネ・ヤコブセンが1957年にデザインし、フリッツ・ハンセン社から発表された名作チェアです。その名は、同年のミラノ・トリエンナーレで最高賞「グランプリ」を受賞したことに由来します。発表当初は木製脚のModel4130として登場し、同年にスチール脚を備えたModel3130が追加されました。
本作は、1952年のアリンコチェア(Model3100)、1955年のセブンチェア(Model3107)と続く積層合板のシェルチェアの系譜を受け継ぎながら、独自の存在感を放っています。特に「狭いウエスト」と「人間的な曲線を思わせる広い背もたれ」によって構成されたフォルムは、視覚的な緊張感と彫刻的な美を兼ね備えています。
構造面では、9層の積層合板と内側に挟み込まれたテキスタイルが椅子の強度と柔軟性を両立させています。木製脚モデルはシェルと同じ合板技術を脚にまで適用することで統一感を追求しましたが、強度面の課題から後に改良が加えられました。一方、スチール脚モデルはスタッキング可能で、オフィスや公共空間での利用を視野に入れた実用性を備えています。
この二つのバリエーションは、芸術的なステートメントとしての存在と、大量生産を前提とした商業的成功という二重のアイデンティティを体現しています。特定の建築プロジェクトのために作られた椅子ではなく、純粋な造形探求として誕生した点も特徴的です。
2014年には木製脚モデルが復刻され、現在でもフリッツ・ハンセン社によって継続的に製造されています。グランプリチェアは、デニッシュ・モダンの理念と素材技術の革新を結晶させた椅子として、今も世界中で愛され続けています。