Story
ヘルゲ・シバストは、デンマーク・モダニズムの中で彫刻的な家具表現を追求したデザイナーです。彼の作品は、素材である木材の特性を最大限に引き出しながらも、人間工学に基づいた快適性を実現することに特徴がありました。その大胆かつ緻密な造形は、20世紀半ばのデンマーク家具を象徴する存在となりました。
1908年にフュン島で生まれた彼は、父ペーダー・オルセン・シバストのもとで育ち、家具作りの基礎を幼少期から身につけました。父が設立した工房「Sibast Møbler」は、のちに彼のキャリアの基盤となり、デンマーク家具産業の発展を支える舞台となりました。
1943年に父の死去後、ヘルゲは兄弟とともに家業を引き継ぎ、デザインと生産の中心的役割を担いました。兄弟の営業力や経営力と相まって、Sibast Møblerは国際的に拡大し、ホワイトハウスやヒルトンホテルをはじめとする名高い顧客に家具を納入しました。ヘルゲはデザイナーであると同時に実業家でもあり、デンマーク・モダニズムを世界に広める役割を果たしました。
彼のデザイン哲学は「妥協なき職人技」と「普遍的な品質の提供」にありました。大胆な成形技術を駆使しつつ、手頃な価格で高品質な家具を広く提供する姿勢は、民主的なモダニズムの理想と直結していました。椅子を「空間の主役」と位置づけ、彫刻的な存在感を持たせる思想は、彼の作品群に一貫して見られる特徴です。
1980年代に事業は一度衰退しましたが、孫ディトレヴ・シバストとその妻によって21世紀に復活を遂げました。現在のSibast Furnitureは、No. 7やNo. 8といった象徴的デザインを再生産しつつ、新たな作品も展開しています。ヘルゲ・シバストの遺産は、妥協なき美学と職人精神が現代へと引き継がれた好例として生き続けています。
About
Year: 1908-1985
Place: Funen(フュン島)
Manufacturer: Sibast Møbler(シバスト・モブラー)
History
1908: ヘルゲ・シバストがフュン島に生まれる
1908: 父ペーダー・オルセン・シバストがステンストラップにSibast Møblerを設立
1930年代: 父の工房で見習いとして家具製作の基礎を習得
1943: 父の死去に伴い、兄弟とともに家業を引き継ぐ
1950年代: Sibast Møblerが国際市場へ拡大、アメリカやヨーロッパへ輸出開始
1953: No. 7、No. 8、No. 9チェアを発表、代表作となる
1957: アルネ・ヴォッダーとの協業によるNo. 29A サイドボードがミラノ・トリエンナーレで受賞
1960年代: 120人以上の職人を抱える大規模工房へと成長
1970年代: アメリカを中心に高級家具メーカーとして確固たる地位を確立
1980年代: デンマーク・モダン家具の人気低下に伴い事業縮小
1984: Sibast Møblerを売却、家族は著作権を保持
1985: ヘルゲ・シバスト死去
2012: 孫ディトレヴ・シバストと妻アンナがブランドを再興
2013以降: No. 7、No. 8、No. 9チェアを中心に復刻生産を開始
現在: デンマーク国内で製造を継続し、伝統と現代性を融合した家具を展開
Furniture
・Sibast No. 7 Chair | シバスト No. 7 チェア
・Sibast No. 8 Chair | シバスト No. 8 チェア
・Sibast No. 9 Chair | シバスト No. 9 チェア
・Sibast No. 2 Dining Table | シバスト No. 2 ダイニングテーブル
・Sibast No. 1 Side Table | シバスト No. 1 サイドテーブル
・Sibast No. 29A Sideboard | シバスト No. 29A サイドボード
・Sibast No. 11 Sideboard | シバスト No. 11 サイドボード
・Rosewood Bar Cabinet Desk | ローズウッド バーキャビネットデスク