Story
Høng Stolefabrik(ホン・ストールファブリック)は、1911年から1997年まで存続したデンマークの家具工房で、椅子の製造に特化した存在でした。その歩みは86年にわたり、デンマーク・モダン運動の理想と課題、そして家族経営の持続力を映し出しています。
創業はChristensen兄弟による小規模な工房でしたが、10年で破産に至ります。その後、家具職人であったPoul Blomhøjが引き継ぎ、Blomhøj家三世代による経営が始まりました。彼らは「品質への献身」を軸とし、職人技と素材の誠実さを体現した家具を作り続けました。
特筆すべきは、デザイナーErik Kirkegaard(エリック・キルケゴー)との長年にわたる協業です。Kirkegaardは機能美と彫刻的な造形を融合させた椅子を生み出し、代表作であるモデル49は「カウホーン」アームレストを特徴とする同社の象徴的な作品となりました。さらに、モデル42、43、52、53などのシリーズも発表され、国内外で高く評価されました。
工房は1947年の大火を経て近代的な施設を建設し、最盛期には50名以上の職人を抱えました。しかし1990年代に入ると、プラスチックなど新素材への嗜好の変化や産業全体の再編に適応できず、1997年に閉鎖しました。その物語は、デンマーク家具産業の興隆と衰退を象徴する縮図といえるでしょう。
About
Year:1911-1997
President:Christensen兄弟、Poul Blomhøj、Blomhøj家歴代代表
Designer:Erik Kirkegaard(エリック・キルケゴー)、Jens Blomhøj(イェンス・ブロムホイ)
Place:Høng(ホン)、Denmark(デンマーク)
History
1911: Christensen兄弟によりHøngで創業、椅子の製造に特化
1921: 経営破綻、兄弟はアメリカへ帰国
1921: 家具職人Poul Blomhøjが未払い賃金と引き換えに事業を継承
1921: 「Høng Borde- og Stolefabrik v/Rasmussen og Brdr. Blomhøj」に改称
1920年代: 「紳士の部屋のための家具」を中心に生産開始
1930年代: Blomhøj家の安定した経営体制が確立
1947: 大火により旧工場が焼失
1947-1950: Slagelsevejに新工場を建設、3,500㎡規模へ拡張
1950年代: デザイナーErik Kirkegaardが加わり、椅子デザインを主導
1956: モデル49(カウホーンチェア)発表
1950年代後半: モデル42、43、53を発表しラインナップを拡充
1960年代: モデル52(コンパスチェア)を発表、DUXを通じて国外へ輸出
1960年代: Jens Blomhøjが保育施設や病院用の家具を設計
1970年代: ラタン家具の製造に参入、時代の嗜好に対応
1980年代: デンマーク家具産業全体の縮小に直面
1992: 支払停止状態に陥る
1997: 破産を宣告し閉鎖、従業員数は16名に縮小
Furniture
・Model 42
・Model 43
・Model 49 | カウホーンチェア
・Model 52 | コンパスチェア
・Model 53
・ラタンチェア各種
・Institutional furniture(保育施設・病院向け家具)