J16 Rocking Chair | ロッキングチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: FDB Møbler(FDBモブラー) / Fredericia(フレデリシア)
Year: 1944
Material: Oak, Beech, Walnut, Rattan
Size: W62 × D95 × H107 cm / SH42 cm


Story

J16ロッキングチェアは、ハンス・J・ウェグナーが1944年にデザインし、FDBモブラーを通じて一般家庭に届けられた名作です。その誕生背景には、第二次世界大戦下のデンマークで物資不足と社会民主主義的理念が交錯する状況がありました。華美な装飾よりも耐久性と実用性を重視する空気の中で、J16はシンプルで頑丈、かつ手頃な価格を実現した椅子として生まれました。

ウェグナーは、椅子を単なる家具ではなく「人体を支える芸術」と捉えました。その思想は、J16の木材接合部の誠実な構造や、無垢材と手編みペーパーコードの素材選択に表れています。また、J16は妊娠中の妻インガのためにデザインされたとも伝えられ、授乳や子守に寄り添う形で「家庭のための椅子」としての温かみを持っています。

デザイン面では、シェーカー様式の簡素さと誠実さ、ウィンザーチェアのスティックバック構造が融合されています。高い背もたれと緩やかにカーブしたアーム、揺れの動きが人間工学的な快適さを生み出し、家族の憩いの場を支える椅子となりました。

製造はFDBモブラーに始まり、その後Kvist社、そして現在はフレデリシアが引き継ぎ、80年を超えて生産が続いています。この継続性は、J16が単なる家具ではなく、デンマーク文化に根付いた象徴的存在であることを証明しています。

J16は今なお「ヒュッゲ」の象徴とされ、リラックスや団らんを支える家具として世界中で愛されています。その存在は、デンマークモダンデザインの核心を体現するだけでなく、人間中心の思想と社会的使命を兼ね備えた普遍的な椅子と言えるでしょう。

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