Story
ヤコブ・ケア(1896-1957)は、デンマーク・モダンの中でも特異な存在であり、単なるデザイナーではなくスネーカーマスター(Snedkermester)として知られる人物です。彼の作品は、クラシカルなイギリス様式から抽出した比例や構造の合理性を基盤としつつ、それをモダンな機能主義と融合させるという独自の美学を体現していました。
彼の工房は1926年にコペンハーゲンで設立され、デザインと製作を一貫して行う稀有な場でありました。ケアは、創造者と職人が分離していく時代にあって、両者を一体化するという哲学を貫きました。そのため彼の作品は、素材の誠実さと職人技の精密さが結晶した、時代を超越する完成度を持っています。
またケアは、家具職人組合の会長やデンマーク工芸輸出委員会の会長を歴任し、国内外でのデンマーク家具の地位向上に多大な貢献を果たしました。国連本部のためのFNチェアをはじめとする作品は、デンマークデザインの国際的評価を確立する象徴ともなりました。彼の工房は単なる製作の場ではなく、デンマークモダンを支える理念の砦であったのです。
About
Year:1926-1957
President:Jacob Kjær
Designer:Jacob Kjær(ヤコブ・ケア)
Place:Copenhagen(コペンハーゲン)
History
1896:デンマークに生まれる
1910年代:父の工房で家具職人として修行を開始
1918:ベルリン工芸美術館付属学校で学ぶ
1920:パリで建具職人として経験を積む
1926:コペンハーゲンにて自身の工房を設立
1929:バルセロナ万国博覧会に出展し国際的評価を獲得
1930:工房にてクラシカルなデザインを基盤にした新作を展開
1935:マホガニーを用いたソファを製作、後に美術館に収蔵
1937:パリ万国博覧会で「パリ・チェア」を発表
1940:フレミング・ラッセンのデザインによるセティを製作
1941:家具職人組合展において新作を発表
1944:デンマーク工芸輸出委員会の会長に就任
1945:戦後の輸出振興に尽力、デンマーク家具の国際的拡大を主導
1947:国際展示会に作品を多数出展
1949:国連本部のため「FNチェア」をデザイン
1950:デンマーク王女のため「プリンセスデスク」を製作
1952:コペンハーゲン家具職人組合の会長に就任
1953:家具職人展にて幾何学的デザインのチェアを展示
1954:ハンドワーク・メダルを受賞
1955:ブラジリアンローズウッドを用いた高級家具シリーズを展開
1956:ニューヨーク近代美術館の展示に参加
1957:逝去、工房の製作はクリステンセン&ラーセンに継承
Furniture
・Paris Chair
・FN Chair B37 | 国連チェア
・Princess Desk | プリンセスデスク
・Armchair JK-06
・Settee Sofa | セティ
・Dining Table JK-08
・Coffee Table JK-10
・Sideboard JK-12
・Writing Desk JK-14
・Cabinet JK-16
・Lounge Chair JK-18
・Sofa JK-20