JH504 Dining Chair | ダイニングチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1950
Material: Oak, Cane
Size: W52 × D47 × H76 × SH43 cm


Story

JH504 ダイニングチェアは、ハンス・J・ウェグナーがキャビネットメーカー、ヨハネス・ハンセンと協働して1950年に発表した作品です。本モデルは、1949年の代表作「ザ・ラウンドチェア(JH503)」に続いて制作され、同じデザイン言語を持ちながらも、アームのない軽快なプロポーションへと展開された点に特徴があります。

JH504は、ウェグナーが追求した「有機的機能性(Organic Functionality)」を体現しており、あらゆる角度から美しく見えることを前提に設計されています。直線的な脚部と緩やかなカーブを描く背もたれは、オーク材の強度を最大限に引き出しつつ、ほぞ継ぎによる堅牢な接合で構成され、実用性と美しさを両立しています。

座面には籐(ラタン)が用いられており、通気性と軽量性を確保しながら、素材の温かみを強調しています。籐張りは経年により張替えを必要とする場合がありますが、その織り方は当時の職人技術を再現する高度な修復が求められます。ウェグナーは天然素材の魅力を重視し、座面に籐を選ぶことで、人間と家具の触覚的な対話を重んじました。

JH503がアーム付きの「彫刻的な椅子」として国際的な注目を集めたのに対し、JH504は日常的なダイニングシーンに適合するコンパクトな椅子として位置づけられています。この二つのモデルは連番であり、ウェグナーがデザイン哲学を異なる用途に応用する試みを示しています。

本作は1950年に開催された芸術工芸春季展(Arts & Crafts Spring Exhibition)で公開され、単なる実用品ではなく、デンマーク家具職人文化の到達点を示す作品として高く評価されました。背面に貼付された「Johannes Hansen Cabinet Maker」のラベルは、工房による少量生産品であることを証明し、JH504の稀少性を裏付ける要素となっています。

ウェグナーとヨハネス・ハンセン工房の協働は、デンマーク家具デザインにおける「職人技とモダニズムの融合」の象徴です。JH504は、その流れの中で生まれた代表的な作品であり、後のデンマーク・モダン家具の展開に決定的な影響を与えた椅子として位置づけられます。

 

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