JH507 Armchair | アームチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1952
Material: Teak, Oak, Leather
Size: W61 × D46 × H80.5 × SH42 cm


Story

JH507 アームチェアは、1952年にハンス・J・ウェグナーによってデザインされ、名高い指物師ヨハネス・ハンセン工房で製造されました。この椅子は、ダイニングチェアの発展過程における重要な節目を示す作品であり、JH501(ザ・チェア)やJH505(カウホーンチェア)と並ぶ、ウェグナー初期の代表作のひとつに数えられます。

JH507の特徴は、公共空間や図書館での使用を想定した耐久性と機能性の両立にあります。背もたれは人間工学的に湾曲し、広い座面と相まって長時間の着座を快適に支えます。特に注目すべきは脚部を補強するストレッチャーの存在で、これにより横方向の応力に対する強度が確保され、日常的に使用される環境でも高い信頼性を保ちます。

素材にはチークやオークといった無垢材が使用され、座面や背もたれは黒革で張られることが多く、木材の温かみとレザーの緊張感が絶妙なコントラストを生み出します。すべてのパーツは職人による精密な手彫りと木工接合で仕上げられ、工業化技術に頼らない伝統的な指物師の技術が息づいています。

1965年にはハーバード大学カウントウェイ医学図書館に多数導入され、ブルータリスト建築の石壁とオーク材フレームの対比が高く評価されました。これは、JH507が単なる家具ではなく、デンマーク・モダニズムが国際的に認められた象徴的な事例でもあります。

JH507は生産数が限られたため極めて希少であり、今日ではヨハネス・ハンセン工房の黄金期を代表する工芸遺産と見なされています。耐久性と機能美を兼ね備えたその姿は、今なお普遍的な魅力を放ち続けています。

 

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