JH571 Architect’s Desk | アーキテクツ・デスク


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン) / PP Møbler(PPモブラー)
Year: 1953
Material: Teak (top), Oak (legs), Chrome-plated steel (frame, handles)
Size: W195 × D90 × H72.5 cm


Story

JH571「アーキテクツ・デスク」は、1953年にデザインされたウェグナーの代表的なワークデスクです。天板のチーク、脚部のオーク、そしてクロムメッキ鋼のフレームとハンドルによって構成され、温かな木材と冷たい金属の対比が、静かな緊張感と均整のとれた美を生み出しています。広い天板は作業のための十分な空間を確保し、建築家やデザイナーにふさわしい機能性を備えています。

この作品の最も特徴的な点は「宙吊り」の引き出しユニットです。一般的なデスクのように天板や脚と一体化させるのではなく、分離したかたちで配置することで、軽快で透明感のある構造を実現しています。さらに、外側に傾斜する脚部を金属製のブレースで補強し、視覚的なダイナミズムと高い安定性を両立させました。ここには「構造を隠さず正直に見せる」というウェグナーの思想が明確に表れています。

素材の組み合わせもまた、作品の魅力を引き立てます。天板はチーク単板仕上げで深い色調を見せ、脚部のオークは堅牢さと明るさを兼ね備えています。クロムメッキ鋼は強度と光沢を与え、木材だけでは実現できない繊細なラインを可能にしました。木材は年月とともに古艶を深め、金属は輪郭を保ち続けることで、時間と共に一層の魅力を放つようになります。

このデスクは、ウェグナーとヨハネス・ハンセン工房との緊密な協働の成果でもあります。革新的な図面を妥協のない職人技で具現化するハンセン工房の力は、宙吊りの引き出しや精巧な納まりなどの難所を克服し、設計の意図を忠実に形にしました。この関係性は、デザイナーと職人の理想的な協働の在り方を示しています。

その後、製造はPPモブラーに引き継がれました。伝統的な製造哲学を受け継ぎながら再生産を行うことで、JH571は今日においても高い完成度を保ち続けています。広々とした天板と繊細な構造は、現代のワークシーンにも適応し、静かで確かな存在感を放ちます。

JH571は、機能性と美学、伝統と革新が見事に融合したデスクです。素材の対話と構造の透明性を兼ね備え、空間に落ち着きと格を与える存在として、デンマーク・モダンを象徴する傑作のひとつであり続けています。

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