JH573 Architect’s Desk | アーキテクツ・デスク


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1953
Material: Teak, Oak, Mahogany
Size: W155 × D80 × H73.5 cm


Story

JH573は、1953年にハンス・J・ウェグナーが設計し、ヨハネス・ハンセン工房によって製作された大型デスクで、しばしば「Architect’s Desk(建築家のデスク)」と呼ばれます。この呼称は、単に職務用の机としてではなく、設計者と使用者双方の専門性を象徴する存在として構想されたことを示しています。

デスク全体は「力強いグラフィックな輪郭」と「有機的な彫刻的ライン」を融合させ、直線的な天板やキャビネット構造と、緩やかに絞られた脚部や手彫りの取っ手が共存しています。この意図的な対比は、ウェグナーが追求した「構造と美の統合」の思想を端的に表しています。

機能面では、施錠可能な4つの引き出しと左右両側に引き出し式の補助棚を備え、建築家や管理職が広い図面や計画書を扱えるよう設計されています。鍵付きの収納は機密保持を意識したものであり、専門職のための高級家具としての地位を強調します。

構造面では、蟻継ぎやほぞ接ぎといった伝統的な指物技術が徹底的に用いられました。遊びを最小限に抑えた精度の高い仕上げは、経年により引き出しがきつくなったり、棚がわずかに沈むといった現象を生みますが、これはむしろ「極限まで正確な手仕事」の証拠といえます。

素材は主にチークが用いられ、ほかにオークやマホガニー突板のバリエーションも確認されています。突板加工は広い天板の反りを抑える高度な方法であり、外観的な美しさと構造安定性を両立させました。これにより、JH573は堅牢さと高級感を兼ね備えたエグゼクティブデスクとして完成しています。

1961年のヨハネス・ハンセンの死後も、息子のポール・ハンセンが工房を継ぎ、ウェグナーとの協働を継続しました。1990年代に工房が閉鎖されたことで、このデスクは「有限の職人遺産」となり、現代ではデンマーク指物家具の集大成として極めて高い評価を受けています。

 

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