JH574 Table Bench | テーブルベンチ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1958
Material: Teak
Size: W194 × D43 × H30 cm


Story

JH574 Table Benchは、ハンス・J・ウェグナーが1958年頃に設計し、ヨハネス・ハンセン工房によって製作された長尺家具です。一般には「ベンチ」と呼ばれる一方、その低さと奥行きから「テーブルベンチ」や「コーヒーテーブル」としても使用され、多様な役割を担うハイブリッドな作品として知られています。

デザインの核心は、多機能性とミニマリズムの融合にあります。高さ30cmという低重心のプロポーションは、リビングや玄関、窓辺に置かれ、座るためだけでなく、書籍やオブジェクトを展示するローテーブルやプラットフォームとしても機能します。奥行方向に並べられたスラット構造は、視覚的に軽快さを与えつつ、長尺家具に求められる強度と安定性を確保しています。

構造的には、全長194cmの長さに対応するため、六本脚のフレームが採用されました。これにより中央部のたわみを防ぎ、使用時の堅牢性を保証しています。チーク無垢材の角は丸みを持たせて仕上げられ、触覚的な快適さと使用体験の質を高めています。こうした細部の処理は、ヨハネス・ハンセン工房の高度な指物技術の証であり、ウェグナーが重視した「完璧な接合」の理念を体現しています。

素材には最高級のソリッドチーク材が選ばれ、均一で美しい木目が強調されています。これは、量産や素材効率よりも、最高の品質と手工芸の伝統を優先するヨハネス・ハンセン工房の理念を反映しています。他の作品で見られる薄板成形や籐(ラタン)などの技術をあえて用いず、無垢材の美と堅牢性を純粋に示す点に、このベンチの独自性があります。

JH574は、家具が単なる道具を超えて、空間を構成する建築的要素となりうることを示した作品でもあります。その水平性は空間に静けさを与え、日本やアジアの低座文化とも響き合い、部屋全体に落ち着きと一体感をもたらします。ウェグナーの「有機的モダニズム」を代表する作品として、デンマークモダンデザインの真髄を伝える存在です。

 

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