About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1955
Material: Teak, Oak, Laminate, Brass
Size: W120 × D60 × H50 cm
Story
ハンス・J・ウェグナーが1955年頃にヨハネス・ハンセン工房のために設計したコーヒーテーブル、通称「リバーシブル・テーブル」は、彼のデザイン哲学と工房の高度な技術が結びついた代表的な作品です。
このモデルは「JH601」と混同されることがありますが、信頼できる記録ではJH575として確認される個体が最も近いものです。特徴はリバーシブル仕様の天板で、片面には美しいチーク材、もう片面には耐久性のあるラミネートが用いられています。これにより、フォーマルとインフォーマル、日常と特別な場面の両方に対応できる二面性を備えていました。
脚部とフレームにはオーク材が多用され、チーク材とのコントラストが生み出す美しい調和が特徴です。また、真鍮製の金具は接合を強固にするだけでなく、デザイン上のアクセントとしても機能しました。こうした構造は輸送やメンテナンスを考慮した分解可能な仕組みを持ち、機能性と実用性を兼ね備えていました。
ウェグナーは、家具の見えない部分にも徹底した美学を注ぎ込みました。天板裏のフレームや接合部の仕上げにも職人技が凝縮され、構造そのものが意匠として成立しています。この「構造美」の追求は、彼が「椅子の巨匠」と呼ばれる所以と同様に、テーブル作品においても明確に示されています。
このテーブルは、ヨハネス・ハンセン工房が持つ比類なきクラフトマンシップを背景に製作されました。ギルド展に出品されることを前提としたこの作品群は、一点物に近い高度な水準で仕上げられており、デンマーク・モダンが世界的に評価される基盤を築きました。
ウェグナーのコーヒーテーブルデザインの中でも、リバーシブル機構を備えたJH575は特に革新的であり、素材の誠実さと機能主義的発想を結びつけた象徴的な存在です。これにより彼は、単なる家具を超え、現代生活における多様な場面に対応可能な「デザインの戦略家」としての才能を証明しました。