JH801 Armchair | アームチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1970
Material: Steel, Leather
Size: W76–78 × D70–75 × H70–77 × SH35 cm


Story

JH801アームチェアは、1970年にハンス・J・ウェグナーが設計し、長年の協働関係にあったヨハネス・ハンセン工房によって製造されました。ウェグナーが「椅子の巨匠」として知られるようになったのは、木材を駆使した有機的かつ彫刻的なデザインによるものでしたが、この作品では主要構造材としてスチールを用い、彼のデザイン哲学を新たな次元に展開させています。

座面高はわずか35cmと低く設定され、ラウンジチェアとしての性格を強く持ちます。フレームにはフラットスチールが採用され、強度と薄さを兼ね備えた直線的なラインによって、軽快かつシャープな印象を生み出しています。張地には皮革が用いられ、冷たい金属フレームに温かみと柔軟性を付与しています。

この素材転換は、ウェグナーが生涯を通じて探求した「純化された機能性」を工業的な素材で実現しようとした試みであり、同時にヨハネス・ハンセン工房の終焉期に生まれた特異な作品でもあります。工房は1940年代から数々の名作を生み出しましたが、1970年代初頭には活動を終えつつあり、JH801の生産数は「非常に少ない」とされています。そのため、このモデルは単なる家具ではなく、デンマーク・モダン史における重要な転換点を物語る歴史的証言といえます。

今日、JH801は市場に出回る数が極めて少なく、コレクターから高い評価を受けています。その価値は、ウェグナーの設計哲学が木材の枠を超えて普遍性を持つことを示す実験的成果である点、そしてヨハネス・ハンセン工房最後期の稀少な証跡である点にあります。JH801は、ウェグナーの多面性とデンマーク・モダンの歴史的終焉を象徴する、特異かつ重要な一脚です。

 

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